徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回は1987年登場のBMW M3を取り上げます。
BMWが欧州各地のツーリングカー選手権制覇を狙い、グループAのホモロゲーションモデル(モータースポーツへの参戦を前提に開発された車種)として開発されたのがM3。
M1や635CSiに搭載された3.5L直6エンジンから2気筒切り取った2.3L直4エンジンを採用した新世代のモータースポーツ直系モデルでした。
このM3とメルセデスベンツの190 2.3-16の対決がドイツツーリングカー選手権(DTM)を大いに盛り上げることになります。’86年10月26日号初出の徳さんのミュンヘンでの試乗記を振り返りましょう。
※本稿は1986年9月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2016年8月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■フォアのM3で、果たしていいのか?
モータースポーツで高い技術を磨き、自社のクルマの優秀性を証明する。メルツェデスはこのモータースポーツを大いに活用し、今日の座を得たことは有名だ。
そしてBMWもかつてヨーロッパツーリングチャンピオンシップを取り、その後フォーミュラ2、フォーミュラ1に進出して一時代を築いたことは、まごうかたなき事実だ。
BMW M3はツーリングカー選手権を勝つために生まれたホモロゲーションモデルである。しかし、“BMWはストレート6に限る”、私もそう思っている。V12ならともかく、フォアが主役になることは、まず考えられない、そう思っていたわけだ。
M3はフォア、しかも1気筒が約600ccという大きさだ。フォアにすれば高回転が可能になる。むろん間違いではない。
しかし、ストレート6もまた高回転に有利なファクターを持っているではないか。もちろん、モータースポーツで勝つためにはエンジンが軽く、コンパクトにできることは有利であろう。フォアがいいこともわかる。
とにかくこのエンジンでヨーロッパのさまざまなツーリンカー選手権で勝とうというのだ。もちろん、ライバルはメルツェデス190E 2.3-16となる。
M3のエンジンはM1や635CSiに搭載されたM88から2気筒を取ったもので、ボア×ストロークは93.4×84.0mmとM88とまったく同じ。シリンダーヘッドの形状も同じである。圧縮比は10.5:1でBMW=ボッシュのデジタルエレクトロニクスでコントロールされる。
パワーアウトプットは200馬力、24.0kgm(後に導入される日本仕様は195馬力、23.4kgm)である。組み合わされるトランスミッションは5MTでシフトパターンはローギアが左下で、Hパターンを形成するレーシングスタイルだ。
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