フェラーリが時折登場させるスペシャルなモデル、通称「スペチアーレ」なんて呼ばれるが、今回登場するF50はフェラーリ創業50周年を記念したモデルだ。
このクルマなんといってもフェラーリ屈指のV12エンジンを搭載していて、当時は「公道を走るF1」なんていわれたスーパーカー。
そしてスペチアーレとしては最後の3ペダルMTだったりもする。当時5000万円だった価格も現在では軽く「億超え」。
でもやっぱりクルマは走ってなんぼ!! ということで今回もスーパーカー手配師「プリウス武井」がインプレッションしちゃいます!!
文:プリウス武井/写真:平野学
ベストカー2018年3月10日号
■創業50年の奇跡を体現したF50
記念日……。英語で言うところの”アニバーサリー”。この世に生を享けた瞬間、誰にでも平等にアニバーサリーは訪れる。それは会社も一緒。会社は〝法人〟と呼ばれ、人ではないが法律上の人格が認められた存在でもある。
今は1円から法人設立できる時代だが、国税庁の統計によると30年以上、存続できている会社はわずか0.025%。
50年後、生き残っている会社は奇跡といえる。ここにイタリアで誕生した自動車メーカーのアニバーサリーモデルがある。
フェラーリF50だ。フェラーリ社50周年を記念して誕生したスペチアーレ。まさに奇跡の1台なのだ。F50がお披露目されたのはフェラーリ50周年より2年早い1995年のジュネーブショー。
F40で膨大なバックオーダーを抱えてしまった反省と世界的な景気の減速期を考え、当時のCEO、ルカ・ディ・モンテゼーモロが生産数をあらかじめ絞らせた。
武骨で荒々しいF40に比べF50は、洗練された優美なデザインを持ち、スクーデリアフェラーリのテクノロジーを惜しむことなく投入され発売当時は「公道を走ることが許されたF1マシン」と評価された。
曲面で構成されるボディラインは、当時の最先端のエアロダイナミクスを駆使していて、大小の開口がボディのいたるところに設けられ、単に美しいだけではなく、冷却や放熱にも配慮した機能的なデザインなのだ。
■シューマッハとの黄金期の幕開けを予感させるメカニズム
各所にF1の設計理論が投入されているが、F1のエンジンが搭載されているワケではない。とはいえエンジンには並々ならぬこだわりがある。
ノジュラー鋳鉄製ブロックや特注の鍛造アロイピストン、チタニウム製コンロッドなど、市販車ではまず使われることがない贅沢な部品を惜しみなく使い、レースマシンさながらの仕様とした。
近年、F1のテクノロジーが市販車にフィードバックされるというキーワードが数多く聞かれる。しかし、実際にF1の技術が投影されたと声高に公表されたのは、同じ1990年代中期に登場したマクラーレンF1とこのF50からかもしれない。
ちなみにF50が登場した1996年は、ベネトンでシリーズチャンピオンを獲得し、頭角を現わし始めていたミハエル・シューマッハがフェラーリに加入。
低迷し続けていたスクーデリアフェラーリは、シューマッハの才能とチーム技術革新で黄金時代を築いたのは歴史が物語っている。
F50は単純に走りを追求しただけではなく、市販車としての優雅さにもこだわった。コックピットはカーボンとスウェード生地で構成。シートの表皮にはレザーが使われ、特徴的なデザインの座面サイドの形状は骨盤部分のホールド感は最高だ。
これにより横方向のGを軽減してくれる。また、座面はしなやかで長距離ドライブでも疲労を感じることはないのだろう。
エンジンの始動はボタン式。イグニッションキーをONにすればクラッチを踏まずともセルモーターが回りエンジンがかかる。インジェクションだから始動性は抜群だ。
アナログ式のメーターパネルは中央に半円形状のタコメーターが配置され、10000rpmまで刻まれる。
その右横には360km/hのスピードメーター。ふつうの市販車ではないことを再認識させられる。経年劣化でメーターが点灯しなくなるトラブルが多いのもF50の特徴だ。
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