■V12の咆哮は今後さらに価値を増すはずだ
エンジンに火が入ると、アイドリング時でも排圧が高いエキゾースト音が気分を高揚させてくれる。
そして、ひとたびアクセルを踏み込むとタコメーターの針が跳ね上がり、管楽器が奏でる音色のように心地いい音を聴かせてくれる。クルマに興味がない人間でもこの音色には魅力を感じることだろう。
F50でも例外なく採用されたマニュアルのフェラーリ定番、シフトゲート。ギアを1速に入れた。
6速トランスミッションは左上が1速だ。さすがアニバーサリーモデルだけあって、シフトストロークは短く操作感は抜群。遠慮なくすばやいシフトチェンジができそうだ。
軽く、扱いやすいクラッチペダルをリリースしていくと何の抵抗感もなく動き出した。エンジンにトルクがあるおかげでアクセルをあおる必要はない。
F50は何度もドライブさせてもらっているが、ルーフを開けた状態で走るのは今回が初めてだ。アクセルを踏み込むと乾いたエキゾーストノートがコックピットにも響き気分は最高潮!!
F1をドライブした経験はないが、フェラーリの12気筒サウンドは、F1マシンを想像させる演出としては充分だ。エンジンのフィーリングは低速からトルク感があり、力強く加速して高回転までストレスないレスポンスで感動すら覚える。
今となっては市販モデルのフェラーリでも520psのパワーはふつうだが、1990年代当時、最高のエンジンスペックを誇ったF50は現在でも色あせないポテンシャルを体感させてくれる。
今回、インプレッションした個体に装着されているタイヤは19インチ。ハンドリングの応答性はオリジナル同様、接地感が伝わり旋回性に異論はない。
それとともに前後ともダブルウィッシュボーンのサスペンションがいい仕事をしている。コイルスプリングとダンパーは水平に配置され、フォーミュラカーで多く採用されるプッシュロッド式だ。
路面状況が刻々と変化する一般道でも突き上げる感覚がなく、しなやかな乗り心地だが、コーナーではサスペンションが稼働して粘りのある旋回性をみせてくれる。
F50ではショックアブソーバーにF1でも採用されていた電子制御コントロールユニットを搭載し、走るシチュエーションに応じて変化するのも特徴だ。
ブレーキは大径のクロスドリルドベンチレーテッドディスクが採用されている。サーボアシストはなく、ドライバーの踏力で効き方が変化する。
ブレーキペダルに軽く足をのせるとドライバーの意思とは関係なく制動を始める日本車とは違い、踏力を変えることでスピードを調整できるから、コーナー進入時のボトムスピードのコントロールには最適。オレ好みのブレーキフィーリングだ。
フェラーリ生誕50周年で誕生した奇跡のクルマF50の生産台数は349台と超希小。今後、歳月の経過とともに奇跡の称号にさらなる重みが出てくるのは間違いない。
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