レクサス初のBEV専用モデル、RZのステア・バイ・ワイヤーモデル試乗でわかった「レクサスBEVが目指す走りの方向性」

■SBWに期待されるのは運転時の身体条件緩和

RZは自律移動を前提にしたクルマの可能性をひろげると筆者は語る
RZは自律移動を前提にしたクルマの可能性をひろげると筆者は語る

 加えて個人的に期待するのは、運転にまつわる身体的な条件を緩めてくれるという効能だ。例えば上肢に障害がある方や、加齢で可動域が小さくなったという方がクルマを操れる可能性を高めてくれるとすれば、移動の自由という大切な人権を享受できる可能性がより広がるわけだ。

 RZのSBWであればフルデジタル制御ゆえ、ドライバー間で操舵特性を任意設定することも、より小さなアングルで大きく曲げることも理論上は充分可能だ。パワートレーン云々は置いておいて、こういう新しさは自律移動を前提としたクルマの可能性を隅々に広げることになると思う。

 今も煮詰めが進むRZのSBWモデルに乗る機会を得たのは、レクサスの開発拠点として着々と準備が進む愛知の下山テストコースだった。そのファーストコンタクトはさすがに肌なじみよく……というわけにはいかず、用心しながら速度と舵角の関係を体になじませていく。

 建物の周りをしずしずと回るぶんには内輪差が気になるほど舵が切れすぎるが、これは可変操舵レシオをもつ従来のクルマでも体験してきたことだ。

 ドライバー側の感覚補正が求められることは間違いないが、目くじらを立てるほどのネガとは思わない。そして完全に慣れれば、切り返しのために舵を持ち直す普通のクルマに乗ることが面倒くさくなる……ことは容易に想像できる。

■際立つ「スッキリした操舵フィーリング」

筆者はハンドルを握っていてステア・バイ・ワイヤーモデルならではの効果として外乱に惑わされないスッキリとした操舵フィーリングを実感したという
筆者はハンドルを握っていてステア・バイ・ワイヤーモデルならではの効果として外乱に惑わされないスッキリとした操舵フィーリングを実感したという

 動きを確認しながらコースに出て速度を徐々に高めていくと、SBWの効能がレクサスの商品性にとって要となる質感の側から感じられる。開発車両を鍛え抜く目的で相当意地悪な設計となっている下山テストコースには、さまざまなパターンの凹凸や山谷の跨ぎ、逆バンクなどで挙動を確認できるところが随所に織り込まれている。

 そういうポイントを好んで踏んでいくとまず気づくのが、外乱に惑わされないすっきりした操舵フィーリングだ。この点はスカイラインのDASでも経験していたつもりだったが、やはり物理的接続をいっさい廃したRZのSBWでは、そのクリアぶりが大きく異なっている。

 一方、物理的接続がないことによるインフォメーションの心許なさは上手く補われているように感じられた。当然ながらセルフセンタリングを含めた操舵反力も人工的に作り込まれているが、速度や舵角によっては普通のモデルよりも手応えに実感がある。

 常速域の動きの軽さに対しての高速域の盤石感、そういうダイナミックレンジの広さは、やはり従来のコンベンショナルなクルマとは比べようがない。すなわち、これがレクサスの動的プレミアムということになるだろう。

■当初はマスタードライバーのモリゾウも「走る気がしない」と厳しい評価……

下山テストコースでの試乗風景。市販に向けて今後もキャリブレーションが重ねられていくRZだが……
下山テストコースでの試乗風景。市販に向けて今後もキャリブレーションが重ねられていくRZだが……

 SBWで操舵実感を伝えるためには、●●km/hでこの路面状況を走る際、モーターが発する周波数を介して、入った舵角に対してどういうフィードバックを伝えるか……的なパラメータを山ほど積み上げていくことになる。

 気が遠くなるほど膨大な作業がそこには待っているわけだ。その途中には、マスタードライバーである豊田章男社長に舵を託す機会もあったというが、その際の評価はインフォメーションの薄さを指して「走る気がしない」という厳しいものだったという。

 現在も上市に向けてキャリブレーションを重ねているというSBWだが、今のハードであればマスタードライバーも納得してもらえるのではないか。そのくらいのレベルに仕上がっていることは間違いない。

 単なる客引きの目新しさだけではなく、レクサスとしての魅力向上にも寄与するそのシステムが日の目を見る時は着々と近づいている。

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