2022年に登場したボルボ XC40。翌年3月には早くもマイナーチェンジが実施されたが、これを「マイナー」チェンジと呼んでよいのか……ボルボはFFとして登場したXC40をRRに変更してしまったのだ。RR版XC40に鈴木直也氏が試乗した!!
※本稿は2023年8月のものです
文/鈴木直也、写真/平野学、VOLVO
初出:『ベストカー』2023年9月26日号
■まるでスマホ?? ついていけない程の進化!!
ボルボXC40の進化が止まらない。
XC40はボルボのCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャ)第一弾として2018年にデビュー。日本と欧州でカーオブザイヤー二冠に輝くなどデビュー当初から高い評価を得てきた。それはそれでアッパレなんだけれど、その後の進化のスピードが常識破りなのだ。
PHEVの導入。標準モデルのマイルドHV化。ナビをはじめとするコネクテッドサービスをグーグルに一本化……。普通は新車導入でひと息つくところなのに、デビューから3年間全力疾走。さらに、そこから電動化プログラムが怒涛のごとく加速する。
2022年には初のBEVとしてC40リチャージがデビュー。2023年に入ってXC40にもリチャージ(BEV)が追加されPHEVは販売終了。息つく間もなく、今度は2024モデルとしてC40/XC40のシングルモーター仕様の駆動方式をFF→RRに変更!
クルマはスマホみたいなスピードで進化しないと言われていたが、近年のボルボの進化はスマホもびっくりの超ハイペース。われわれメディアですら理解が追いつかない勢いがある。
■乗り手をおいていかない!! 優しい味付けな乗り味って??
で、今回はRRに変更されたXC40リチャージ“アルティメット・シングルモーター”に試乗したわけだが、考えてみるとこれって凄いことだと思いません?
だって、ボディやシャシーは基本そのままで、昨日までFFだったクルマが一夜にしてRRに変わるわけですよ。内燃機関では構造上あり得ないし、操安性やドライバビリティをどうまとめるか、開発に2年や3年かかっても不思議じゃない。
ところが、実際に走ってみるとFF時代のXC40リチャージとさほどど変わらぬ自然なドライバビリティ。少なくとも、市街地レベルの走りではFFからRRに変わったことに気づかない人も多いんじゃないかと思える自然な仕上がりなのだ。
もともと、XC40リチャージはEVとしてはマイルドなドライバビリティが持ち味だったが、そのキャラクターは後輪動輪になっても基本的に同じ。
RRのEVというとBMWi3やホンダeみたいな軽快感あふれる走りを想像しがちだが、XC40リチャージはそういうタイプではなく、FF時代と同様真っ当なファミリーカー路線を貫いている。
電動化時代になると、クルマの評価ポイントのなかで“走り”が占める割合は低下する。電動パワートレーンは他社との差別化が難しいし、環境意識の高いBEVユーザーは高性能より環境との調和を好む。
最初のBEVであるC40リチャージでは、ツインモーターで尖った走りを訴求したボルボだったが、本命は明らかにコッチ。XC40リチャージの熟成が進んだ結果が駆動方式の変更につながったようだ。
BEVはまだ普及期だから、航続距離を競ったり0-100km/hのタイムをアピールしたりしているけれど、あと数年経ったらそういう熱は冷めてくるし、ましてや駆動方式の違いなんか誰も気にしなくなるだろう。
ぼくが想像するに、ボルボはきっとそんな風に考えているんだと思う。そういう意味では、2023年後半デビューといわれているEX30に大注目ですね!
●ボルボ XC40の注目ポイント
・MY24モデルからXC40、C40どちらもシングルモーター仕様がリア駆動化
・一充電航続距離が590kmに向上! 長距離ドライブでも安心の電池容量
・ワンペダルドライブに従来の「オン」「オフ」に加えて「オート」を追加
●ボルボ XC40 諸元表
・グレード:リチャージ ULTIMATE シングルモーター
・全長:4440mm
・全幅:1875mm
・全高:1650mm
・ホイールベース:2700mm
・車両重量:2030kg
・パワートレーン:電気モーター
・最高出力:238ps
・最大トルク:42.6kgm
・バッテリー容量:73kWh
・一充電走行可能距離:590km
・価格:719万円
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