■FCEVにもクラウンの伝統が息づく
乗り心地のテイストにもクラウンの伝統はしっかり息づいている。FCEVの駆動部分はまんまBEVだから、その圧倒的な静粛性は歴代クラウンが追い求めてきたものの到達点。
ミライから80mm延長されたホイールベースはすべて後席居住性にあてられていて、ショーファードリブンとしての優雅な走りはシリーズ随一といっていい。
乗り心地は全体的にややソフト目で、クロスオーバーやスポーツとはまったく異なる味わいがある。なかでもぼくが注目したのは、ドライブモードをリアコンフォートにセットした時のゆったり感。
全盛期のクラウンを彷彿させるノスタルジックな雰囲気は、その時代を知らない世代にも新鮮なんじゃないかと感じた。
FCEVと常に比較されるだけに、ハイブリッド仕様は静粛性の向上が大きな課題だったという。エンジンという存在がある以上、絶対的な静粛性では電動車には敵わないものの、スポーティに走らせるなら慣れ親しんだ内燃機関の鼓動は楽しみのひとつ。
THS+4ATのマルチステージハイブリッドはステップシフトに自然なリズム感があって楽しいし、ワインディングを攻めるような走りには足のしなやかさに加えて低重心のセダンパッケージがプラスに寄与してくれる。
走れば走るほど「あー、クラウンにセダンが残ってくれてよかった!」そう思える逸品だと思います。
●クラウンセダン Z(FCEV)主要諸元
・全長×全幅×全高:5030×1890×1475mm
・ホイールベース:3000mm
・最低地上高:135mm
・車両重量:2000kg
・パワーユニット:燃料電池
・モーター最高出力/最大トルク:182ps/30.6kgm
・航続距離:約820km(参考値)
・トランスミッション:―
・サスペンション(F/R):マルチリンク/マルチリンク
・タイヤサイズ:235/55R19
・価格:830万円
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