ディーゼル車だとアドブルーが凍る!? 極寒のフィンランドでもBEVトラックは性能を維持!

ディーゼル車だとアドブルーが凍る!? 極寒のフィンランドでもBEVトラックは性能を維持!

 寒いとバッテリー性能が低下することから、バッテリーEV(BEV)の性能も低下すると考える人は多い。ただ、温度管理システムを備えたBEVトラックには必ずしも当てはまらない。

 ルノー・トラックスによる実践的デモンストレーションによると、北欧・フィンランドの「アドブルーが凍る」極端な低温環境では、ディーゼル車よりむしろBEVトラックのほうが信頼できることもあるそうだ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Renault Trucks

ルノーのBEVトラックが先入観を打ち破る

ディーゼル車だとアドブルーが凍る!? 極寒のフィンランドでもBEVトラックは性能を維持!
ルノー・トラックスの「Eテック T ダイアモンド・エコー」

 ルノー・トラックスは2024年、同社のバッテリーEV大(BEV)型トラック「Eテック T」に、電気発光塗料による特殊な塗装を施した「ダイアモンド・エコー」トラックによる欧州周遊を実施した。

 メーカーによる実践的デモンストレーションは、同年12月、フィンランドのラップランド地方に到着し、長い旅を終えた。

 最終目的地の気温は摂氏マイナス19度を記録していた。低温環境ではBEVの性能が下がるという先入観を破り、ルノーのBEVトラックは極端な寒さでも信頼性を維持することを示した。

 ルノー・トラックスの本社があるフランス・リヨンをダイアモンド・エコーが出発したのは4月だった。フランスからオランダ、英国、スイス、ベルギー、ドイツなどを経て欧州の2万3000kmを実際に走破し、各地でBEVトラックのデモンストレーションを行なうというものだった。

 一日の移動距離は最大700kmで、これは途中での充電により充分に走行可能な距離だった。充電1回あたりの最大の航続距離はスイス・ドイツ間を移動した際の360kmだった。

 また、旅の最終ステージとして12月にフィンランドに入り、極端な低温環境でのBEVトラックのパフォーマンスを確認した。フィンランドの首都・ヘルシンキから北部のラップランド地方ロヴァニエミまで1600kmを走った。

 この区間は、1充電での最大移動距離は250kmだが、1日に2度の充電を行ない道中で最長の1日700kmという距離を走行した。

 低温環境でバッテリーの性能が低下することは広く知られており、多くの人はBEVも同じように性能が低下すると考えている。こうした先入観を、Eテック T ダイアモンド・エコーのパフォーマンスは打ち破った。

アドブルーが凍る極低温でも安定した性能

ディーゼル車だとアドブルーが凍る!? 極寒のフィンランドでもBEVトラックは性能を維持!
冬のフィンランドはアドブルーも凍る厳しい寒さだ

 ルノー・トラックスの電動モビリティ担当ディレクター、レギス・ピエール氏は、この結果を次のように解説する。

「この試験は厳しい冬期環境でも電気トラックが完全に運用可能であることを実証しています。一般に信じられているのとは真逆の結果ですが、航続距離や充電など、低温による影響は一切ありませんでした。

 キャブの暖房も航続距離には大きな影響を与えませんでした。これはルノー・トラックスのプログラマブルな予熱システムにより、ヒーターのエネルギー消費を最適化できたからです」。

 外気温がマイナス19度まで下がる厳しい環境でもBEVトラックはディーゼル車と同等のパフォーマンスを維持した。通常の環境と比べると少しだけ(10~15%)エネルギー消費が増えたが、これはディーゼル車を含む他のパワートレーンでも起きる現象で、冬用タイヤによる燃費(電費)悪化や空気抵抗によるものだという。

 また、ピエール氏はフィンランドの顧客から聞いた話として「前シーズンの冬の、気温が氷点下30度を下回った日に唯一始動したのがルノーのBEVトラックだった」というエピソードを紹介している。

 冷え込みが厳しい日にディーゼル車のエンジンがかからなかったのは、低温によりアドブルー(ディーゼルエンジンの排ガス処理用の尿素水で、現在の大型車では必須)が凍り付いてしまったためだ。

 こうした顧客の実体験は、バッテリーの温度管理システムを備えるBEVトラックが、極端な低温環境ではディーゼル車よりも信頼できることを示しているという。

 ルノー・トラックスは電動ソリューションの運用性と信頼性を確認して、1年近くに及んだ実践的デモンストレーションを締めくくった。

【画像ギャラリー】冬のフィンランドを走るルノーの「Eテック T ダイアモンド・エコー」(4枚)画像ギャラリー

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