スマートフォンなどで普及しつつあるワイヤレス充電をEVトラックへの給電において活用しようという動きが始まっている。ワイヤレス充電はEVトラック充電の新たな選択肢になり得るのか!? 三菱ふそうなどが開始したEVワイヤレス充電の実証実験から、その現在地をみていこう。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
実証実験のあらまし
三菱ふそう、ダイヘン、三菱総合研究所ら3社は、環境省事業としてEVワイヤレス充電の研究開発を進めてきたが、このほど名鉄NX運輸の物流現場で三菱ふそうの小型EVトラック「eキャンター」を用いた「停車中EVワイヤレス充電」の実証実験を開始した。
EVワイヤレス充電は、停車中に行なうSWPT(Static Wireless Power Transfer)と、道路に送電コイルを埋め込み走行中に行なうDWPT(Dynamic Wireless Power Transfer)があり、走行中充電が実現すればバッテリーの小型化や航続距離の延長など、EVの課題を根本から解決できるメリットがもたらされる。
また自動運転との親和性も高く、電動化することで人の手を介さず自動運転車両の充電が行なえるようになるほか、EVワイヤレス充電の「位置ズレ」の課題(後述)も自動運転技術によって解決ができるとされている。
今回の実証は、最終目標であるDWPTの公道実装の前段階として、SWPTを物流事業所という実環境の中で使用し、技術的または運用上の課題を抽出するのが狙いである。
実運用を行なうのは名鉄NX運輸・江南支店(愛知県江南市)で、同支店では2023年のオープンから5台のeキャンターを導入・運用しており、EVワイヤレス充電がもたらす効果を検証するのにはうってつけの場所といえる。
運用方法としては、eキャンターの乗務経験が豊富な専属ドライバーがワイヤレス充電式eキャンターを運転し、朝から1日50~70kmほどの配送・集荷業務を行なって、帰着後に夜間のEVワイヤレス充電を実施する。
実証期間は3月末~6月末の約3カ月で、主にドライバーによる操作・駐車のインプレッション、ケーブルレスによる安全性・省力化などの検証を行なうとしている。
EVワイヤレス充電システムのしくみ
では、その仕組みはどうなっているのだろうか?
ワイヤレス充電は、大きくわけると電磁誘導方式と磁界共鳴方式の2つ。電磁誘導方式は近距離の充電しかできないためスマホや電気シェーバーなどの給電で用いられている方式。
いっぽう磁界共鳴方式は、送電側と受電側のコイルを同じ共振周波数に合わせ空間を介して電力を伝送でき、位置ズレの許容範囲も電磁誘導方式よりは広いため、EVワイヤレス充電などに採用されている。
今回のEVワイヤレス充電システムは、この磁界共鳴方式を用いて地上に設置された送電ユニット→送電コイルユニット→クルマ側の受電コイルユニット→受電ユニット→ジャンクションボックス→駆動用バッテリーという流れで電力を伝送。
具体的には、施設のキュービクル高圧受電設備の三相交流200V・60Hzの電流から送電ユニットのインバーター回路で85kHzという高周波の交流電流を作り、送電コイルユニットで交流磁界を発生させる。
そして受電コイルユニットで交流磁界を高周波の交流電流に変換し、受電ユニットのAC/DCコンバーターでバッテリーに充電可能な直流電流に整流。CHAdeMO(急速充電)とワイヤレス充電を切り替えるジャンクションボックスという装置を経由してバッテリーに充電する仕組みになる。
このジャンクションボックスが搭載されているのは、ダイヘンのワイヤレス充電システムがCHAdeMOプロトコルで制御されており、eキャンターの急速充電用高電圧ケーブルに結線しているためだ。
実証では急速充電は使わないが、運転席側のダッシュボードの上には、ワイヤレス充電開始スイッチとともに急速充電/ワイヤレス充電の切替スイッチが備わっている(普通充電は切り替え不要)。
充電は、クルマを停車させると送電ユニット上部に設置した超音波センサーで車両を認識。あとはドライバーが運転席からスイッチを押すだけで充電を開始することができる。
なお、ワイヤレス充電の出力は急速充電クラスまで上げることもできるが、江南支店の運用方法では大出力は必要ないため、今回はピーク電力(電気料金)を考慮し5kWという普通充電クラスの出力である。




