三菱ふそうトラック・バスの小型EVトラック「eキャンター」が、電動化政策を推進中のインドネシアで発売されることになった。同国では初の小型EVトラック市販となるもので、自動車の電動化政策を進める同国市場での推移が注目される。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
インドネシア初の市販EVトラック
インドネシアでの新型eキャンター発売は、首都ジャカルタで8月10日に開幕した「第30回GAIKINDOジャカルタ国際オートショー」のプレスカンファレンスで発表された。
三菱ふそうは、現在日欧で発売中の新型eキャンターを、2024年から、現地販売会社・PT.クラマ・ユダ・ティガ・ベルリアン・モータース(KTB)を通じて、首都ジャカルタ圏内で販売する。
インドネシア市場向け新型eキャンターは、三菱ふそう川崎工場から完成車を輸出するが、具体的な展開車型や販売方法は検討中。また、現地で「キャンター」「ファイターX」を組み立てているPT.クラマ・ユダ・ラトゥ・モーターズ(KRM)でのeキャンター生産についても未定としている。
同国トラックユーザーおよびドライバーにとってEVトラックは、まったくの「未知のクルマ」であることから、市販に先立って2022年から、リゾート地であるバリ島で初代eキャンターのテスト運行が進められている。KTBではその評価も踏まえて、具体的な販売計画を策定したいという。
電動化への関心も上昇中
同国では、バッテリーEV(BEV)の開発・普及を促進するための大統領令を2019年に公布、国を挙げた取り組みをスタートしている。同国では、国内自動車生産台数のLCEV(BEVのほかハイブリッド車、燃料電池車など)の目標比率として、2025年に20%、2030年に25%、2035年に30%を策定しており、併せて充電ステーションなどインフラの整備も進めている。
また、EV購入に対する税制優遇が施行されており、富裕層を中心にEV乗用車の関心も高まっているが、首都ジャカルタは世界有数の大気汚染地域といわれており、国際物流企業など一部のトラックユーザーが地球環境の保全から、同国でのEVトラック運用に興味を示しているという。
インドネシアのトラック市場は日本メーカーが圧倒的に強く、低価格を武器に進出した中国メーカーやインドメーカーのシェアはごく少数にとどまる。しかし、EVで自動車産業の世界的パラダイムシフトを進める中国メーカーも近年、同国で小型EVトラックのテスト運行を行なっているといわれ、同国の電動化促進政策がどのような影響をトラック市場に及ぼすかは、誰にも予測できないところだ。
インドネシア国際オートショーの開催初日には、アイルランガ経済担当調整大臣とアグス工業大臣が会場を訪れ、参考出品された日本仕様の新型eキャンターの運転席に乗り込む姿も見られた。