実際の勤務データをもとにシミュレーション!! 海コン運転手にとって「2024年問題」ってどーなの? 

拘束時間の上限は?

 例の「わかりやすい解説」を見てみますと、コラムで「所定」と「法定」の労働時間の違いを説明しています。これによると、一般的に言われている「残業」と、法律上の「時間外労働」には違いがある場合があるようなんですね。

 どーゆー事かと言いますと、法律上の時間外労働ってのは、労働基準法で定められた「1日8時間・1週40時間」の「法定労働時間」を超えた部分を指すそうなんですよ。

 なので、「始業時刻が9時、昼休みが12時から13時まで、終業時刻が17時30分」ってな会社に勤めている場合、会社が定めた労働時間である「所定労働時間」は昼休みを除いた「7時間30分」です。

 18時まで働くと「所定」では30分の残業となるものの、「法定」では労働時間が8時間を超えていないため時間外労働とはならないそうなんですね。

 いわゆる「休日出勤」についても、「所定」と「法定」では解釈が違っていて、会社として「土曜日・日曜日・祝日は休み」って定めている場合、土曜日や祝日なんかに出勤したら、それは「休日出勤」ってな扱いになります。

 労働基準法では「原則として、使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回休日を与えなければならない」とされている事から、会社側が「日曜日」を「法定休日」と定めていたとすると、土曜日や祝日に働いた分は「休日労働」にはならず、日曜日に働いた分が「休日労働」としてカウントされるようなんですね。

 ただ、月曜日から土曜日までの労働時間が40時間を超えた部分に関しては、「時間外労働」となるようなんで、注意が必要です。

 それらを踏まえて、年間で960時間という上限について考えてみましょう。

 1日8時間・1週40時間を超えた分が法定の「時間外労働」になるワケだから、1日の休憩時間を1時間と仮定して、これを加えた拘束時間は「1日9時間・1週で45時間」までは時間外労働にはならないカタチになりますね。

 1年を52週とすると、年間で2340時間を超えた部分が時間外労働になります。これに上限である960時間を足した3300時間が、1年度に拘束してもイイ時間になります。

 しかし、ここでチョットした疑問が……。会社によっては、「ウチ、休憩90分なんだよね」ってところもあると思います。だとすると「1週47.5時間として年間で2470時間が法定労働時間になるから、総拘束時間は3430時間になるよね?」なんて話になりそうなんですが、それはムリっぽいです。

 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)が同時に改正されるためで、全日本トラック協会などが出している資料によると「拘束時間は1年3300時間以内、1カ月284時間以内。

2024年度以降の労働時間等の変化(厚生労働省が発行している改善基準告示の啓発チラシより抜粋)
2024年度以降の労働時間等の変化(厚生労働省が発行している改善基準告示の啓発チラシより抜粋)

 労使協定を結んだ上で条件を満たせば、例外として1年3400時間以内、年6カ月まで1か月に310時間まで延長可能」って事になるようなんですよね。

 調べれば、調べるほど、ワケがわからなくなりますし、イロイロと面倒なんで、1年度の拘束時間は「3300時間以内」として話を進めましょう。

実際の海コン運転手の仕事に当てはめると……

 手元にですね、昨年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)の、自分の勤務データがあるので、それを基に時間外労働の上限規制をクリアできているのか見てみましょう。

 自分が勤めている会社の、所定休日は、「第1週と第3週の土曜日、もしくは第2週と第4週の土曜日」(第5週の土曜日は全員出勤)、「日曜日と祝日」、「夏休み3日」、「年末年始休み6日」となっています。

 自分は第2・第4土曜日に出勤するグループだったので、2022年の出勤日は年間で266日でした。が、お昼くらいをメドに上がってしまう、いわゆる早退が6日、有給休暇を取って休んだのが8日、祝日出勤が3日あったので、差し引きすると実際の勤務日数は262日となっています。

 休憩1時間込みの年間の総拘束時間は3282時間でした! 基準の3300時間まであと18時間ってな、なかなかのギリギリっぷりですが、これはクリアしていますね。

待機時間が長く拘束時間も長いイメージのある海コン運転手。でもヒロさんの会社の場合は、すでにクリア!?
待機時間が長く拘束時間も長いイメージのある海コン運転手。でもヒロさんの会社の場合は、すでにクリア!?

 次に1か月の拘束時間の284時間以内って部分ですが、これはチョット厳しいです。オーバーしちゃってる月が5回あって、最大で25時間オーバーの月もあります。

 クリアしている月は7回あって、中には上限よりマイナス49.5時間の月なんかもあったりするので、労使協定の「例外」を満たせばトータルではOKって感じでしょうか。

 1日の拘束時間(13時間以内。上限を15時間として、14時間超は週2回まで。長距離輸送の場合、週2回まで16時間まで延長可)って部分に関しても、なかなか厳しいです。15時間を超えたケースが年に16回ありました。平均すると一日の拘束時間は12時間半ですし、トータルでは問題ないんですが……。

 自分の所属している会社では、昨年くらいから2024年問題に対して、イロイロな対策をしています。

 最初にやり始めたのは、出庫時間の制限でしょうか? 今まで、出庫する時間は運転手の判断に任されていたので、自由っちゃ自由だったんですが、今では「明日お前は何時出庫ね」みたいな制限を出すようになりましたね。

 正直なところ、個人的にその制限に対しては違う意見を持っているし、昨年度や一昨年度の自分の勤務データを集計した上で、総拘束時間については「ソレ、守らなくてもクリアできるから」ってな自信があるので、あまり守ってはいないです。

 この業界では、仕事が無いのに運転手を出勤させ「今日さ、出勤する必要あったの?」ってな日が年に数日あります。そんな日に運転手を休ませたり、積極的に有給を取らせたりすれば、年3300時間ってな制限はクリアできます。

 もちろんそれは、会社が仕事内容の見直しや拘束時間の削減など、イロイロやってくれている上での事なんですけどね。


 今回は、労働時間というか拘束時間の部分に絞って、話をさせてもらったんですが、2024年問題が深刻なのはソコだけではないんですよ。

 そう、トラック業界と言えば、燃料価格の高騰や高速料金の値上げから目をそらすワケには行きません。会社の利益が減ると運転手を増やせず、一人当たりの負担が増え、働き方改革はさらに難しくなります。

 あくまで自分のトレーラヘッドの話なんですが、昨年度は6万2334km走ってまして、燃料の給油量は2万7556リッターでした。軽油価格ってかなり変動するんですが、神奈川県内の某日の店頭平均小売価格である145円/リッターで計算してみると、1年に燃料代が399万5620円かかったって事になります。

 さらに、高速代は230万9430円かかっているので、合わせると2022年度は630万5050円かかったって事になります。自分のトレーラヘッド1台でこの数字ですからねぇ……、会社全体ではおそろしい限りです。

 どの業界も、値上げ、値上げで大変かと思いますが、燃料代の高騰や2024年問題で運送業界も大変です。特に運転手の給料が今までより減っちゃうんじゃないかって心配しています。

 あまり日の当たらない運転手と言う職業ですが、頑張っている運転手たちを、ココロの中で応援してもらえると嬉しいです。

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