さまざまな専用装備
キャブは、日本でいう「広幅・フルキャブ・アッパーヘッドライト」に相当する現地仕様となる。FN62F HD-Rは、同じ現地仕様でも「ブラックカラーエディション」という特別塗装が与えられており、フロントグリル、フェンダー、ステップ、フロントバンパーがマットブラックになっている。
そのフロントバンパーは、ライバル車よりも高い位置にレイアウトするとともに、ステアリングホイールの操向に合わせて自動点灯する、コーナリングランプを装着している。また、フロント下部には、ラジエターユニットを保護するラジエターガードが新たに取り付けられ、岩石や砂利、泥などとの接触・付着を防いでいる。
フロントガラスにはウィンドゥフィルムを貼付してドライバーへの日射を抑え、エアコンを標準装備することにより、ドライバーの快適性を確保。また、サイドウィンドゥにはバイザーも装着する。さらに鉱山での運行に合わせて、ホーンは大音量タイプとなっている。
ダッシュボードおよびインパネの形状は、日本のファイターとほぼ同一だが、面白いのが「アワーメーター」を装着している点だ。これはエンジンの稼働時間を表示する計器で、定期点検・定期整備の目安として使用する装備である。
稼働率を維持するための地道な取り組みも
従来型よりも大幅に商品力をアップしたFN62F HD-Rだが、ふそう車が強力な基盤を築いているオンロードトラック市場とは異なり、鉱山用トラック市場は「これから本格化する市場」である。そこでクルマを売るために、どのような取り組みを行なっているのだろうか。
KTBの板谷拓未マーケティングマネージャーによると、「『鉱山』といっても採鉱している鉱石(石炭、ボーキサイト、ニッケルなど)によって、現場のオペレーションはまったく異なり、積載の状況やシャシー・荷台の傷み方も違います」という。そのため単に鉱山ダンプを売るだけではなく、「小型トラックのビジネスと同じように、やはりユーザーの声に応えることが重要です」と話す。
その上でKTBが取り組んでいるのが、「パーツデポ・エキスパンション」という新サービスだ。これはユーザー自身、オフロードで高比重の鉱石を大量に運ぶという運行環境の過酷さを承知しているいっぽうで、やはり稼働率は維持したいというニーズから生まれた、「トラブル発生→即・修理補修」できるアイディアである。
鉱山は、市街地どころか人里からも遠く離れていることが多い。そこで、補修部品をストックしたコンテナをあらかじめ設置しておき、必要に応じてユーザーの自家整備スタッフが部品を取り出して利用するのが、パーツデポ・エキスパンションのコンセプトである。
もともと三菱ふそう車(および三菱自工の小型商用車)が強いのは、トラブルが発生しても迅速に修理・補修できる体制を、KTBがいち早く確立した点にある。そのノウハウを鉱山用トラック市場にも応用したといえるだろう。