いすゞ自動車と本田技研工業(ホンダ)は、2020年から大型燃料電池トラック「ギガFUEL CELL」の共同研究を進めているが、12月22日から公道での実証走行を開始した。両社それぞれの物流子会社で実際に使用し、2027年の市場導入に向けたデータ収集などを行なう。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
初の公道実証走行
ギガFUEL CELLは、いすゞの大型トラック「ギガ」低床4軸8×4シャシー(CYJ77C-WX)をベースに、ホンダの燃料電池(FC)をはじめ、圧力70メガパスカル水素タンク、電動パワートレインを載せた研究用試作車だ。
いすゞは、小型FCトラックの開発ではCJPTおよびトヨタと提携しているが、大型FCトラックの開発はホンダと共同で取り組んでおり、2027年に投入予定の実用モデルに搭載するFCも、ホンダが開発・供給することで合意している。
ホンダは、すでにFC乗用車の市販を2016年に実現させたが、エネルギー密度の高い水素を用いるFCは、大重量で長距離を運行する商用車のカーボンニュートラル化に最適なパワーソースとして、FC展開領域の多角化を目指している。
今回スタートした実証走行では、両グループの物流子会社(いすゞロジスティクス、ホンダロジスティクス)の協力を得て、荷役作業性と公道走行における車両実用性、水素充填を含む車両運行管理といった実用面、また、大型FCトラックの市場適合性といった開発面で、データの取得、知見の蓄積、技術的課題の抽出などを行なうことにしている。
実証試験は2024年9月まで実施する予定で、栃木・埼玉・東京・神奈川での運行を予定している。
ギガFUEL CELLの概要
公道実証走行に供されるギガFUEL CELLは、今秋開催のジャパン・モビリティ・ショー2023でいすゞが参考出品したバン架装車と同型の試作車で、全長11980mm×全幅2490mm×全高3770mm・車両総重量(GVW)25トンとなる。
ホンダ開発のFCは、自動車用として一般的な固体分子型(PEM)で、第1世代モデルと第2世代モデルが存在するが、現段階でギガFUEL CELLが搭載するのは前者だ。燃料電池セルを集積したFCスタックの出力は1基103kWで、これを4基搭載し、基本的には直接、走行用モーターへ電力を供給する。
走行用モーターは、セントラルドライブ式の交流同期電動機で、ディーゼル車と同様にプロペラシャフトを介してドライブ軸を駆動する。定格出力320kW(435PS)で、日本の単車型トラックとしては高出力車に相当する。
併せて高電圧バッテリー(リチウムイオン電池・容量不明)を搭載しており、制動時や減速時の減速エネルギーを、走行用モーターで電力に変換(回生)してストレージする。この電力を走行に使うことで、水素消費が節約できるわけだ。
なお、いすゞの開発エンジニアによると、満充電で回生ブレーキが使えない場合には、代わりにギガ・ディーゼル車の補助ブレーキと同じ永久磁石式リターダが作動して、減速能力を維持するとのことだった。