位置情報分析サービスを提供するLocationMind(以下LM)はNEXT Logistics Japan(以下NEXTロジ)と共同で準天頂衛星システム「みちびき」を利用したトラックのCO2排出量把握のための実証実験を開始した。
今回実証を開始する技術は、これまでの算出方法と比べ、車両ごとに精度の高いCO2排出量の算出が可能となるが、なぜトラックで正確なCO2排出量の把握が必要になるのか? そのあらましをまとめた。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真・図/NEXT Logistics Japan・LocationMind・フロード編集部
温室効果ガス削減量の可視化を目指す「CO2排出量モニタリング支援ソリューション」
今回の試みは、内閣府主催の「2023年度 みちびきを利用した実証事業」において、LMがNEXTロジと共同して、「みちびき」の高精度位置情報と信号認証技術を利用したCO2排出量モニタリング支援ソリューションの実証実験を行なうというもの。
みちびきは、準天頂軌道の衛星が主体となって構成されている日本の衛星測位システムで、日本版GPS(GPSはアメリカの人工衛星を利用したシステム)とも呼ばれる。サブメータ級測位補強サービスやセンチメータ級測位補強サービスなど、高精度かつ安定した衛星測位サービスが特徴である。
実証実験を行なうCO2モニタリング支援ソリューションは、従来のCO2排出量計算方法と比べ、高精度・高信頼性の位置情報を用いることで、より精緻な計算が可能になり「CO2削減量の可視化」に貢献するという技術だ。
将来的には、トラックの走行ログと物流事業者の配送情報を組み合わせることで、配送ごとや荷主企業ごとのCO2排出量の算出も可能になるため、CO2の削減だけではなく配送効率の向上など、運送物流事業者と荷主企業の双方に対して付加価値を提供することが可能になる。
またNEXTロジでは、今後のカーボンクレジット取引(※)の普及に伴い、発生する可能性のある誤報告や意図的な情報操作によるCO2排出量の不正リスクに対処するため、改ざん不可能な位置情報を活用し、精緻で信頼性の高いCO2排出量データをいちはやく提供することも検討していくという。
※企業が温室効果ガスの削減効果(植林などによる吸収量も含まれる)をカーボンクレジットとして発行し、他の企業と売買できる仕組み。運送事業者など温室効果ガスを排出量をゼロにすることがむずかしい企業はクレジットを購入することでCO2削減に貢献しているとみなすことができる