新たな商用車アライアンス誕生の動きなのか!? イヴェコと現代自動車・フォードが提携拡大へ!

新たな商用車アライアンス誕生の動きなのか!? イヴェコと現代自動車・フォードが提携拡大へ!

 イタリアの大手商用車メーカー、イヴェコ・グループは2024年3月14日、フォード・トラックスとの大型車用キャブの共同開発に向けた覚書と、現代自動車とのパートナーシップ拡大を発表した。

 自動車業界が「100年に1度」と言われる変革期を迎える中、スケールメリットを追求して商用車メーカーもアライアンスを形成しているが、フィアットグループから独立したイヴェコはどこのアライアンスにも所属していない。新たな商用車アライアンス誕生に向けた動きなのだろうか?

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/IVECO Group・Ford Trucks・Hyundai Motor Company

イヴェコと現代自動車が提携拡大

新たな商用車アライアンス誕生の動きなのか!? イヴェコと現代自動車・フォードが提携拡大へ!
IAA2022に登場したイヴェコ「eデイリーFCEV」のプロトタイプ。ヒョンデの燃料電池を搭載し、同社との提携も発表された

 イタリアのイヴェコ・グループと韓国の現代自動車(ヒョンデ)は2024年3月14日、欧州の商用車事業におけるイノベーションを推進するため、パートナーシップを強化すると発表した。

 両社は大型商用車の電動ソリューションに向けて従来のパートナーシップをさらに強化するという意向書(LOI)に署名した。

 バッテリー電気自動車(BEV)や燃料電池電気自動車(FCEV)など、今後、競争が激しくなることが確実なゼロ・エミッション車の開発において、両社の協力関係を大型トラックまで拡大するという包括的なもので、双方の先進技術と資産を活用することで、サステナブルな未来に向けた取り組みを加速する。

 イヴェコとヒョンデのパートナーシップは2022年3月の覚書から始まっているが、既に大きな成果が上がっているという。

 例えば同年9月のIAAトランスポーテーション(ハノーバーで隔年開催される世界最大規模の商用車見本市)で明らかにされた「eデイリーFCEV」は、イヴェコの「eデイリー」に、ヒョンデの燃料電池システムを搭載した小型商用車だった。

 他に、イヴェコ・バスの「EウェイH2」や、最近発表されたヒョンデのeLCVプラットフォームをベースとする「イヴェコ」ブランドの小型商用車(欧州市場向け)なども両社の提携による成果だ。

 今回の提携拡大では、これまで主な協業分野だった小型車・バスから、イヴェコにとって主力となる大型トラック分野にまで踏み込んでいる。

フォード・トラックスとも共同開発に向けた覚書

新たな商用車アライアンス誕生の動きなのか!? イヴェコと現代自動車・フォードが提携拡大へ!
大型トラック用キャブの共同開発など、イヴェコとフォード・トラックスが協力関係を模索している

 同じく3月14日、イヴェコはトルコのフォード・オトサン傘下の大型商用車ブランドであるフォード・トラックスと、大型商用車のキャビンの開発などで協業の可能性を模索することで合意し、覚書(MoU)を締結した。

 覚書に拘束力はないが、両社がトラックのコンポーネント・システムを含む新技術・新商品を共同開発するための最初のステップとなる(実際にヒョンデとのパートナーシップ拡大も数年前の覚書から始まっている)。

 合意の目的は欧州においてEUの安全基準を守りつつCO2削減のための空力性能を改善するなど、両社の競争力とソリューションを強化し、フォード・トラックスとイヴェコの間で互恵的パートナーシップを発展させることだという。

 1959年に設立されたフォード・オトサン(Ford Otomotiv Sanayi)は、米国のフォード・モーターとトルコのコチ財閥が折半出資する自動車メーカーで、フォード・トラックスはその大型商用車ブランドだ。

 フィアットの商用車部門を出自とするイヴェコと、フォードの商用車の関係は複雑だ。1975年に誕生したイヴェコはフォードの商用車事業やルノーのバス事業を吸収して世界的な商用車メーカーとなり、またそのパワートレーン部門であるFPT(フィアット・パワートレーン・テクノロジーズ)は欧州最大のディーゼルエンジンメーカーになった。

 2011年にフィアットの産業機械・商用車部門が分社化され、建設機械のケース・ニューホランドと共にCNHインダストリアルとなった後、イヴェコとFPTは2022年にCNHインダストリアルから独立して「イヴェコ・グループ」となっている。

 フォードのトラックは「モデルT」(T型フォード)をベースとする「モデルTT」以来の長い歴史を持つが、北米市場での大型トラックの展開は20世紀中にはほぼ終了している。ただ、欧州のトラック市場にはフォードの遺伝子が受け継がれており、そもそも1981年のキャブオーバー大型トラック「フォードカーゴ」自体は、英国のフォード・オブ・ブリテンが製造していた。

 フォードは1986年に欧州の商用車部門をイヴェコに売却しているため、その車両は「イヴェコ・フォード」にリバッジされ、後に「ユーロカーゴ」にモデルチェンジした。

 いっぽうトルコではフォード・オトサンが1985年からフォードカーゴを製造しており、2003年のモデルチェンジでは同社製の新型「エコトルク」エンジンを搭載している。フォード・トラックスがフォードグループ唯一の大型トラックブランドとなる中、2018年には後継の「Fマックス」で欧州市場参入が発表された。

 こうした経緯から両社は共にフォードの商用車を祖先に持ちながら欧州市場で競合する関係になっていたのだが、今回の提携が実現すれば1986年以来の「元の鞘」である。

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