大盤振る舞いが続く電動車両の補助金を考える
ところで話が前後するが、この事業には崇高な目標が掲げられている。いわく、
運輸部門は我が国全体のCO2排出量の約2割を占め、そのうちトラック等商用車からの排出が約4割であり、2050年カーボンニュートラルおよび2030年度温室効果ガス削減目標(2013年度比46%減)の達成に向け、商用車の電動化(BEV、PHEV、FCV等)は必要不可欠である。
このため、本事業では商用車(トラック・タクシー・バス)の電動化に対し補助を行ない、普及初期の導入加速を支援することにより、価格低減による産業競争力強化・経済成長と温室効果ガスの排出削減をともに実現する。
本事業では、商用車の電動化のための車両および充電設備の導入に対して補助を行なうことにより、今後10年間での国内投資を呼び込み、商用車における2030年目標である8トン以下:新車販売の電動車割合20~30%、8トン超:電動車累積5000台先行導入を実現し、別途実施される乗用車の導入支援等とあわせ、運輸部門全体の脱炭素化を進める。また、車両の価格低減やイノベ-ションの加速を図ることにより、価格競争力を高める。
具体的には、省エネ法に基づく「非化石エネルギー転換目標」を踏まえた中長期計画の作成義務化に伴い、BEVやFCVの野心的な導入目標を作成した事業者や、非化石エネルギー転換に伴う影響を受ける事業者等に対して、車両および充電設備の導入費の一部を補助する……、というもの。
確かにCO2排出削減、カーボンニュートラルは喫緊の課題だとは思うが、たとえば今から6年後の2030年、車両総重量8t以下の新車販売における電動車の比率が20~30%になるとはとても思えない。あくまでも目標ということかもしれないが、もう少し現実的に考えて実効的な方策を練ったほうがいいのではないか。
令和5年度の補助金の総額は、当初予算と補正予算を合わせると「クリーンエネルギー自動車(CEV)導入促進補助金」が1291億円、「商用車電動化の補助金」が535億円で、合計1826億円にのぼる。しかも、このところその額は大盤振る舞いが続いており、歯止めが効かない感じだ。
温室効果ガスの削減などの社会的命題を提起されると言いづらいのだが、補助金ジャブジャブで電動車両を普及させることが本当に正しい道筋なのだろうか? 補助金を出さなければ普及しないというのであれば、いつまで補助金を出し続ければいいのだろう。普及率が20~30%になるまで補助金という名の税金を気前よく出し続けていたら、国が傾いてしまうだろう。
もう、この辺で一旦立ち止まり、補助金頼みの普及というワンパターンの施策ではなく、もっと大局的に見て真にカーボンニュートラルに資する方策を見極めるべきなのではないか?
少なくとも電動車両の普及を図る上でも、全方位で可能性を探るマルチパスウェイの考え方が必要な時期に来ていると思う。
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