花王は日本初の「自動運転フォークリフトによるトラックへの積み込み作業の実用化」に成功した。試験環境による「実証」ではなく、実際の現場と製品、オーダーによる本番環境での「倉庫の完全自動化」が実現しそうだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/花王株式会社・株式会社豊田自動織機
本番環境での「自動フォーク」実用化は日本初!
花王は、少量多品種を生産する同社豊橋工場の次世代倉庫内の現場環境において、「自動運転フォークリフトによるトラックへの積み込み作業の実用化」に成功したと発表した。
いわゆる「実証実験」など試験環境ではなく、路面や柱などの周辺環境に特別な工事や機器設置をしない半屋外環境下において、実際のオーダー・製品の積み込み作業を自動運転フォークリフトで実施したもので、日本で初めての成果だという(豊田自動織機調べ)。
2024年10月には本格導入し、日常的に稼働を始めることにしている。豊橋工場の次世代倉庫は、隣接する工場や物流拠点との一体運営を目指しており、製品の入庫から仕分け・出庫まで完全自動化を実現している。これに加えて、トラックへの積み込み作業を自動化することにより、業務効率化や労働力不足へ対応する。
物流の自動化が求められる背景には、「物流の2024年問題」がある。働き方改革関連法などによりトラックドライバーの労働時間短縮が必要となり、今後、物流の担い手不足はさらに深刻化することが予想されている。このため、物流業務の効率化・自動化の必要性が高まっているのだ。
花王では、多様化するニーズに対応した商品を必要な量だけ届けることで、資源や環境への負担が少ない、循環型社会に貢献するESG視点での「よきモノづくり」に取り組んでいる。
豊橋工場では「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」構想を推進しており、生産・物流機能一体型運営による無駄のない製品の供給や、リードタイムの短縮、物流コストの低減、CO2排出の抑制を図っている。
同工場において2023年3月に完成した次世代倉庫は、工場から製品を入庫、仕分け、出庫するまでを自動化することにより、柔軟な物流体制への対応を進めてきた。
しかし、出庫後のトラックへの積み込み作業は、都度異なる荷物やトラックの規格への対応、停止位置の誤差調整、長距離輸送にも耐えられるように荷崩れ防止の養生も必要なことから、人の経験を活かしたフォークリフト運転技術が必要となっていた。
花王と豊田自動織機の協業による成果
そこで花王は積み込み作業の自動化に向けて、2021年より豊田自動織機と協働を開始。2024年7月に自動運転フォークリフトの実用化に成功した。現場での実際のオーダー・輸送を伴う導入は、日本で初めてであり、製品入庫からトラックへの積み込みまで、完全自動化された倉庫が実現する。
今回採用したのは、豊田自動織機が開発した「トラック荷役対応自動運転フォークリフト」で3D-LiDAR(レーザー光により対象物との距離を正確に測るセンサー) を用いたトラック位置検出、ガイドレスでの自動運転に加え、AIを搭載することで、画像認識・ディープラーニングによるマーカーレスでのパレット位置・姿勢検出ができる。
荷役位置を自動で判断しながらトラックまでのアプローチ走行経路を自動生成するため、トラックの停車位置や積荷の姿勢が一定でない状況下においても荷役の自動化が可能だという。
花王では、自動化を実現するため「ロボットフレンドリー」な倉庫環境の構築と、製品入庫からトラックへの積み込みまでをスムーズに自動化するオペレーション設計を行なった。さらに、トラック輸送にも対応した業務プロセスの構築や、倉庫内の設備を制御するITシステム(WCS=Warehouse Control System)との連携も行なった。
花王の次世代倉庫の環境にいち早く導入するため、豊田自動織機とともに仕様検討を行ない、今般の実用化に至った。両社はさらなる効率化をめざして、引き続き協働を続けて行くそうだ。
また、自動運転フォークリフトは次世代倉庫のみならず、国内外の花王グループの生産・物流拠点への導入も検討している。さらに、業界内でも広く活用されるよう知見を広げていくことにより、「物流の2024年問題」と総称される社会課題への対応を進めて行く。
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