累計発行部数5500万部を超える伝説のクルママンガ『頭文字D』。クルマ好きの若者たちはこれを読み、古き良きスポーツカーに昂り、峠へと繰り出した。2020年には新装版も発売され、連載終了からおよそ10年が経過しようとしている現在でもその熱は冷めやらず、当時のクルマたちは中古車市場においても高い人気を誇る。
本稿では、同作に登場した人気車をピックアップし、連載当時は詳しく語られなかった、各車の仕様(グレードやボディカラー)、カスタマイズ、チューニングの変遷などを紹介していく。今回も前回に続き、プロジェクトD・ダブルエースの一台、RX-7(FD3S型)を取り上げる。クラッシュを喫してしまった啓介が、FDに施したチューニングとは?
文/安藤修也
マンガ/しげの秀一
■不慮の事故から大きな転換期を迎える
人気キャラクター高橋啓介の愛車であるRX-7(FD3S型)は、ハチロクに次ぐ頻度で改良されており、作中においてさまざまな姿を読者に見せてきた。たとえば、冬のスノーロードを走る際にはしっかりスタッドレスに履き替えてホイールも変更されていたし、同時にマツダスピード製と思われる大型フォグランプ埋め込み式のバンパーを装着して、光量もしっかり確保している(Vol.180「冬を制する者」)。
前編でも紹介してきたとおり、対「エンペラー」戦までは細かな改良を続けてきた同車だが、物語中盤、プロジェクトDへの参戦以降は、さらに速さを追求するために進化していくことになる。その動きが最初に見られたのは埼玉エリア遠征の最終戦。ランエボばかりのチームとの対戦がきっかけだった。
このチーム(チーム名は不明)、勝つためには手段を選ばないとんでもない輩たちの集団で、啓介の練習走行時に合わせて路面にオイルを撒くという卑劣な行動に出る。結果、FDは残念なことにクラッシュしてしまい、左フロント部を大破させてしまう。
このピンチに際して、啓介は、彼に思いを寄せている岩瀬恭子の愛車(同じFD3S型RX-7)を借りて走行。ドライバーとしての実力差を思い知らせながら、ランエボVに完全勝利を収めている。そして啓介のFDは、この事故で負ったダメージを修復するにあたって、足まわりだけでなくその他のパーツも変更し、そのイメージまで変えることになる。