BC編集部に来て1年が経った社用車のミライ。水素で動く燃料電池自動車ということもあり公道で注目を集めることも多い。ただし、インフラ整備の遅れなど、世間の期待が大きいわりには使い勝手に問題をかかえているのも事実。編集部のミライが納車1年で走行1万kmと、社用車としてはかなりのローペースなのも、無意識のうちに長距離ドライブを敬遠しているからだろう。
納車1年たった今、改めてミライの可能性を探るべく、その実力と問題点を再リポートする。
まずは、納車直後(2015年7月)に東京~軽井沢のロングドライブに挑んだBC編集部飯干のレポートでミライの実力をふり返りつつ、インフラなどがここ1年でどう変化したのかをまとめてみる。
文:ベストカー編集部、WEBベストカー編集部
ベストカー2015年8月26日号
ミライと旅に出る
BC編集部にやってきたミライは文字どおり未来のクルマ。あまりにも未来すぎて、若干手に余る感がないでもない。650㎞というカタログ値ほどには走らないらしいし、水素ステーションも数が少なく、あっても週休2日が一般的で夕方5時には閉まるところがほとんど。やはり気軽には使いにくい。
私、飯干が編集部を代表してミライで初めてのロングドライブに出かけることにした。仲よくなろうぜ、ミライくん。
行き先は日本有数の避暑地、軽井沢。水素ステーションで燃料を満タンにして翌日のドライブに備える。1kg約1000円の水素を満タン(タンクに入る水素の量は約5kg)にした直後、メーターの航続可能距離計は444㎞を表示。カタログ表示の650㎞にはほど遠いが、これだけ走れれば軽井沢往復(約300kmの行程)は楽勝だろう。
文明の利器を信じてはいけない?
快適なエアコン、レーダークルーズコントロールを駆使して、関越道の練馬ICから約130㎞走って、上信越道の碓井軽井沢ICに到着。練馬ICに入る直前にリセットした燃費計は101.7km/kgなっていた。燃費計が独特だが水素1kgでどれだけ走れるかという数値。つまり101.7km/kgは水素1kgで101.7km走れるということだ。
初めてのドライブだから、その燃費がどれほどのものかわからない。しかし、高速に乗る前の一般道で93.1km/kgだったことを考えると、101.7km/kgという数値はあまり良さそうではない。
ルートがずっと上り坂が続く方向であることは加味しつつも、加速時にムダにパワーを使いがちなレーダークルーズコントロールに疑いの眼を向けてしまう。すまんね。
夏休み全開の避暑地で一人で盛り上がるのは難しく、そそくさと帰ることにする。再び燃費計をリセットし、上信越道に突入。帰りは自分の足で速度をコントロールする。やっぱりこっちが楽しい。ミライの加速フィールはEVだけど無機質じゃない。高級車の味わいだ。
気になる燃費は……?
練馬ICをおりて、すぐに燃費をチェックすると125.7km/kgだった。下りが続くこともあって、行きよりもかなり上昇。ここまでの全行程で走行距離304.7km、平均燃費106km/kg、航続可能距離116kmとなった。
軽井沢でもっと走り回れる燃料が残っていたということだが、水素ステーションの問題がある。次に使うことを考えると燃料を入れて自宅に戻りたい。でも夕方5時や5時半を過ぎるともう水素ステーションは閉まってしまう。出先で走れる燃料はあっても燃料補給をしている時間がない。水素社会黎明期(現在)ならではのジレンマだろう。
■テストから1年、2016年の現状はどうなの?
間違いなくベストカーの社用車史上で最高の乗り心地の1台ともいえるミライ。静粛性もあり、長距離への取材も楽に感じる。しかし未だに編集部から15分以内でアクセスできる水素ステーションは1つのみ(九段下)。また埼玉以北の地域に行く際は極端に水素ステーションが減るので、地図の行程とのにらみ合いだ。
水素ステーションの数は約80カ所(計画中、移動式も含む)で1年前とほぼ変わらず。相変わらず東京とトヨタのお膝元である愛知県に集中しているのが現状だ。しかしながら当初は営業時間は9:00~15:00という「お役所向け」なスタンドも多かったが、現在は9:00~22:00まで営業というスタンドも増え改善も見られる。
北米での発売開始もあり未だにミライの納期は軽く3年はかかるとのことで、それまでにはもっともっと手軽に使えるクルマになっていることを期待したい。2020年オリンピックイヤーまでに4万台の燃料電池自動車を公道に走らせたいという目標をかかげる国、目標だけに終わらせないためには、よりいっそうのインフラ整備が求められるだろう。
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