衝撃の300万円で登場? ちょうどいいEV=[ヒョンデ インスター]は今度こそ日本車キラーになれるのか!?

■当たり前のことが当たり前にできる

奇をてらわないインテリア。収納も豊富
奇をてらわないインテリア。収納も豊富

 気になる電費は高速7割/一般道3割くらいを走らせて8.5~9.0km/kWhを記録。走行前の航続距離とトリップメーター+残りの航続距離も誤差も少なく、実用の航続距離はカタログ値に限りなく近そうだ。

 プラットフォームは内燃機関モデル用(ヒョンデK1プラットフォーム)をベースにBEVに最適化されたモノ(バッテリー搭載に合わせて床下にフロアメンバー追加)を採用。それに合わせてEPS制御やサスペンションのセットアップも最適化。更に静粛性アップのために二重シールやアコースティックガラス、補強されたラゲッジボード、アンダーカバーの採用なども行なわれている。

 フットワークはコンパクトモデルを感じさせないドシっとしたモノで、全幅1615mmを感じさせない直進安定性。コーナリング時はスポーティ/ワクワクと言った過度な演出は一切なく、操作した分だけ素直に曲がる印象だ。

 具体的には応答性や挙動変化を含めたコーナリング一連の流れは穏やかだがダルではない、トレッドが拡大されたかのような安定感とFFらしからぬ4輪を効果的に使った旋回姿勢、基本は安定方向の挙動などを実感。要するに「当たり前のことが当たり前にできる走り」が備えられている。

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■補助金を使えば200万円を切るか!?

乗り心地は良好。夏タイヤの走りも試してみたい
乗り心地は良好。夏タイヤの走りも試してみたい

 快適性は偏平のオールシーズンタイヤ(205/45R18)特有の硬さを感じないといえば嘘になるが、ストローク感の高いサスペンションはショック/振動をフワッと上手に減衰してくれるので、多くの人が「乗り心地いいね」と感じるだろう。

 ただその一方、高速道路などで大きなうねりを乗り越えるような時に、ショックが一発で収まらないことがあったので、個人的にはもう少し硬めのセットでいいので、バネ上の無駄な動きは抑えたほうがいいと感じた。

 静粛性はロードノイズに不利なオールシーズンタイヤ、風切り音が不利なボディ形状だが、それらが気にならないレベルに抑えられている。その証拠に、今回の走行で一番気になったのは車両接近警報音だったくらい。

 ちなみに日本での導入時期はハッキリしていない上に価格も未公表だが、日本では兄貴分となるコナが400~500万円ということを踏まえると、フル装備で300~350万円くらいじゃないかなと予想。補助金を活用すれば多くの人にとってかなり現実的な選択肢になってくるはず。

 ハードの実力とコストのバランスと言う観点で見ると、日本車もウカウカしていられないレベルである事は間違いない。

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■「ヒョンデを選びたい」という決め手が必要

アイオニック5同様「ピクセル」をモチーフに活かしている
アイオニック5同様「ピクセル」をモチーフに活かしている

 では、インスターは「日本車キラー」になれるのか? それは素直にYESとは言えない。その要因はいくつかある。

 まずは「オンライン販売」だろう。2023年のヒョンデの日本での販売台数は489台、「現在は台数云々よりブランドの認知に重きを置いているフェイズだ」と語るも苦戦しているのは事実である。

 インスターは普通のユーザーに買ってもらいたいモデルであり、ターゲットカスタマーは国産車ユーザーである。その多くはこれまでのように販売拠点に出向き、実際に「見て・触って・試して」から買いたいと思うが、その場がないのは辛い。

 続いては「日本人の輸入車に対する想い」だろう。昔よりは一般的になったものの、今でも「ガイシャ」と特別な感情を持っている人が多いため、ベーシックなモデルは支持されにくい環境だ(それを好むマニアもいるが、ごく少数)。例えばメルセデス・ベンツはAMGパッケージ、BMWのMスポーツパッケージがノーマルモデルよりも人気なのは、そういうことだ。

 インスターは工業製品としてはとても優れているが、「それでもヒョンデを選びたい‼」と思わせる決め手、つまりクルマという商品としての魅力がまだまだ足りず、「いい人」で終わってしまっている。

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