フィット、デミオ、ノート、スイフト…同じお金で借りられるレンタカーでも、車種によって長所・短所はかなり違う。今回は旅先、出張先でも人気が高い上記4台のコンパクトカーを実際に借りて、使って、乗り比べ。
目的別で最も使えるレンタカーはいったいどの1台?
文:渡辺陽一郎/写真:茂呂幸正
ベストカー2016年9月26日号
CASE1 長距離をストレスなく走りたいなら「デミオ」
「疲れないための」乗り心地
レンタカーで重視されるのは、移動中の疲労を左右する乗り心地と騒音。この2点をで、最も快適だったのはデミオ(1.3Lエンジン車)だ。
乗り心地は少し硬いが引き締まり感が伴い、よくいえば重厚感がある。段差を乗り越えた後の収まりもいい。ノイズはテストした4車種の平均水準だが耳障りではない。
2位はフィット(1.3Lエンジン車)だ。発売当初に比べると改良を受けたことで硬めながら粗さは抑えられている。ノイズは50㎞/hでは少し大きいがアイドリング状態では静かだ。
3位はノート(1.2L、NAエンジン車)。乗り心地は少し硬くコツコツした印象がある。ノイズは50㎞/hでは平均的だが、アイドリング時は静かだ。
4位はスイフト。今回テストに使ったレンタカーは積算走行距離4万9763㎞と足まわりも少し劣化して粗さを感じた。50㎞/hでのノイズは小さめで遮音を入念に行っている。
「ストレスなく運転できる」加速のよさ
加速が最もいいのはデミオ。実用回転域の駆動力が高く、50→80㎞/hの加速は4車中でトップだった。発進加速は6速ATが災いした(他3車はCVT)。50㎞/h少々で1速から2速にシフトアップされてタイムロスが生じる。
2位はスイフト。ボディが4車中で最も軽く発進加速も活発だ。3位はフィット。実用回転域の駆動力が少し弱く、高回転域で加速が活発になるから発進加速は不利だ。
4位はノート。4車のなかでボディが最も重いうえ、最大トルクは10.8kgmと、ほかの3車よりも1kgm以上低い。加速力はやや緩慢だ。
■加速テストの結果
- デミオ【0−60km/h加速:7.16秒、50−80km/h加速:5.53秒】
- スイフト【0−60km/h加速:7.00秒、50-80km/h加速:6.53秒】
- フィット【0−60km/h加速:7.31秒、50−80km/h加速:6.09秒】
- ノート【0−60km/h加速:7.35秒、50−80km/h加速:6.60秒】
CASE2 4人で旅行なら後席広々&荷物も積める「フィット」
「4人ぶんの荷物をきっちり積むための」積載性
積載性はフィットの圧勝だ。燃料タンクを前席の下に設置したから荷室の床が低い。リアゲート開口部の下端も地上高が61㎝と低く、重い荷物も収納しやすい。
荷室の奥行も充分。全長が4m以下なのに後席の足元も広く空間効率は抜群だ。後席は背もたれを畳むと大容量の荷室になり、座面を持ち上げると車内の中央に背の高い荷物を積める。
2位はノート。荷室の奥行にゆとりがあり、リアゲート開口部の下端も低い。ただし後席を倒すと、広げた荷室の床に段差ができる。
3位はスイフト。荷室の奥行が乏しく、リアゲート開口部の下端が地上から80cmあり高いので、荷物を収納しにくい。
4位はデミオ。荷室の奥行が狭い。運転姿勢はペダルの配置を含めて自然だが、後席と荷室が犠牲になっている。

上がフィットの荷室で、下がデミオの荷室。フィットの荷室スペースは明らかにデミオより広く、低いので荷物の積み込みも楽チン。
「4人全員がゆったり移動するための」後席の居住性
最も快適なのはノートだった。頭上と足もとはLサイズセダン並みに広く、シートアレンジが単純だから座面も適度に柔軟だ。
2位はフィット。後席の頭上空間はノートを下まわるが足もとは広い。シートアレンジが多彩で柔軟性に少し欠けるが、4名乗車して、長距離を快適に移動できる。
3位はスイフト。頭上と足もとが狭く4名で乗車すると窮屈に感じる。座り心地は適度に柔軟でシート自体はいい。4位はデミオ。頭上と足もとが狭く、着座位置も低いから腰が落ち込む、ウィンドウの下端が高く閉塞感も強い。


上がフィットの後席で、下がノートの後席。頭上空間はノートのほうが余裕あり。ただ、足もと空間はフィットもノート以上に広い。ともに後席の広さはデミオ、スイフトを大きく上回る
【結論】
荷室の広さならフィット、後席の広さならノートと割れたが、3名以上の乗車を考えるとフィットが1位だ。後席の居住性と積載性は抜群で、動力性能、乗り心地、安定性も満足でき、総合評価が高い。
ノートは2位。後席は最も快適で荷室も使いやすいが、動力性能や操舵感はフィットに負ける。
……ということで、CASE2のベストチョイスはフィットに決定!
CASE3 財布にやさしい経済性重視なら「スイフト」
ガソリン代を安く抑えるための「燃費性能」
今回取材したのはレンタカーだから、車種によって状態が異なる。また、常にエアコンを作動させたから、数値が全般的に悪化した。従って目安と考えてほしい。
1位は14.9km/Lのスイフトだ。カタログに載るJC08モードは20.6km/Lだから達成率は72%。5万㎞近く走っている車両だが燃料消費量は少ない。
2位は13.4km/Lだったフィット。JC08モードは24.6km/Lだから達成率は54%だ。
3位は12.6㎞/Lだったノート。JC08モードは22.6km/Lで達成率55%だ。
4位は11.8km/Lだったデミオで、JC08モードは24.6㎞/Lだから達成率は48%となった。
ちなみにレンタカー大手のニッポンレンタカーでは、デミオ、フィット、ノート、スイフトの4台とも同じ「S-Sクラス」で、料金もまったく同じ8748円(税込、24時間)だ。
同じ料金のクラスでも、車種によってそれぞれ長所・短所が異なるもの。「愛車はこだわるけれど、レンタカーの車種には気を使っていなかった」という方は、目的に合わせて、車種指定で借りれば後悔しないレンタカー選びができるハズだ。