WRX STIの2ペダル版ともいえるWRX S4にあの「tS」が2017年3月12日までの受注期間限定で登場。
さっそくベストカーではそのS4 tSがベンチマークとした、BMW M240iクーペと徹底比較。BMWにどこまで迫れるのか!? もしやBMWを追い越している!? 鈴木直也氏のインプレッションをお届けしたい。
文:鈴木直也/写真:小宮岩男
S4 tSはS207のマイルドバージョンではない
スバルには熱狂的なファンが多いのは有名だけど、驚いたのは昨秋に出たS207が瞬時に400台完売したこと。
そりゃ内容は史上最強といっていいすばらしい出来だったけど、ベースモデルでほぼ600万円ですよ。これがアッという間に売り切れちゃうんだから、「スバルファンはすげぇ…」ホントそう思った。
こういう「イイものを作ればユーザーは評価してくれる」というサイクルがうまく回り出すと、作り手側にもある種の自信が生まれてくる。その好循環の成果が、今回試乗したWRX S4 tSといえる。
このS4 tS、ざっくり言えばリニアトロニック(CVT)仕様のS207なのだが、コイツを単なる幅広いユーザーに向けたS207のマイルド仕様と思ったら思慮が浅い。
クルマのキャラクター付けも、ビジネスとしても、よりチャレンジングな企画だと思う。S207の究極のパフォーマンス志向は、コアな〝スバリスト〟に向けたメッセージが明確。これを買うユーザー層がハッキリ見える。
でも、そういう人たちは究極志向ゆえにCVTは選ばない。S4 tSがターゲットにしているのは、欧州プレミアムスポーツに乗っているような、もっとカジュアルなユーザー層。
こういうライバルからスバル愛の薄いユーザーを奪ってくるのは、S207を400台売るよりはるかに難しい。
足回りの熟成が進むS4
今回はS4 tSが開発ベンチマークにしたというBMW M235クーペの改良型のM240iクーペと乗り比べてみたのだが、大健闘なところもあれば、まだまだという部分も多々あり、STIとしても「まだ手探りの段階」というのが正直な感想だった。
特筆すべきS4 tSの魅力は、まずなんといっても足回り。ビルシュタインのダンプマチック2を装着するなどS207に準じる贅沢なスペックを、乗り心地にも配慮して入念にチューニング。
その結果、ハンドリングと乗り心地の上質さは、定評のあるBMWと比べても甲乙つけ難い水準に仕上がっている。
いちばん痺れたのは、基本的に決してソフトなセッティングではないのに、小さな段差の凸凹でもまるで舐めるようにスムーズに足が動くこと。
この部分だけで500万円という価格も納得。そういっても過言じゃない絶妙の乗り味が表現されている。
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