少し離れたところからじっくりとクルマを眺め、次に近づいてボディ各部の処理を丹念に検証。そこから水野氏の試乗は始まる。
本記事では、1月23日に発売された「ベストカー水野和敏SPECIAL」の「水野の乗り方」企画より抜粋し、水野氏がどのようにクルマを評価しているのかをお見せする。
『ベストカー水野和敏SPECIAL』より
大事なのは「どのカテゴリーで何にプライオリティを置くか」
クルマを評価する時に大切なのは、まず乗ることより「見る」ことです。
内外装を入念にチェックすることで、どのくらいのレベルの開発がされているのかがほとんどわかります。
クルマはいかに効率よく、必要最小限のサイズで多くの求められる要件を満たすか? これが開発したメーカーやエンジニアの能力レベル。サイズやスペースを大きくすればなんでもできます。しかしそれは素人チック、誰にもできること。
なかにはデザインのためだけに100mm以上もムダなスペースを使っているコンパクトカテゴリーのクルマもありますが、大事なのは「どのカテゴリーで、どんなことにプライオリティがあるか」です。
例えば「贅沢の美学であるスポーツカーなら、多少駄肉でも情緒的デザインのためにある程度の寸法は使うが、使いやすさが大切なコンパクトカーなら徹底的に効率を求める」などです。
クルマはアートではなくユーザーのライフスタイルを演出し、創り出す工業製品なのです。
このケイマンも、実は少しムダが見られます。フロントにはエンジンがないのになぜこんなに長くする必要があるのでしょうか?
おそらくフロントは911とほとんど共通なのだと思いますが、ケイマンはリアエンジンではなくミドシップ配置なので後ろを詰めているのに前は長いままです。
横から見ると頭でっかちで前にお辞儀して見えてしまいます。もう少しフロントオーバーハングを詰めたほうがバランスはよくなるでしょう。
デザインの前後バランスというのは、前と後ろの重量感と言い換えることができます。
ケイマンは前が重そうに見えるので、ミドシップというよりFFに見えてしまうのです。その結果、911ほどの車格感もステイタス感も出ないのです。
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