近年のEVといえばやたらと加速度の速さだったり、航続距離だったりとかなりオーバースペックなカタログ数値の争いが続いている。もちろんそれは技術革新のうえで大切なことだが、普通に生活していると「そこまで要らないんだよなぁ」ということも多いだろう。今回発表となったスズキeビターラはちょっと違うぞ!!
文:ベストカーWeb編集部/写真:スズキ
【画像ギャラリー】乗ってもよし、見てもよし!!? 安心感抜群なeビターラを見て(5枚)画像ギャラリー「速ければいい」ではないを体現するeビターラ
近年のEVの記事を見ると「0-100km/加速が2秒台」などの文字が踊ることが多い。もちろんEVの大きなセールスポイントとして背中を蹴られるような加速感もあるのは事実だが、実際にそのスペックはスーパースポーツカーと同等のもの。
世間のほんの数%のユーザーが求める加速度ばかりが先行してしまうと、EVがやや遠い存在にも思えちゃうし「ちょっとそこまでは要らないよね」という話になりかねない。
だからこそ日産SAKURAは身の丈にあったというべきか、ちょうどいいスペックで、しかも軽自動車ということもあってEVとしてのセールスは超好成績だったのだろう。
しかしそれ以外のEVはちょっと先進的なデザインなどを含めて、既存車ユーザーからは「ちょっと近寄りがたい」と思う人も多いのではないだろうか。
今回のスズキeビターラは確実にど真ん中を射抜いてきたデザイン、そして走行性能だと感じる。
EVらしさがいい意味で薄く「普通がいいよね」
今回試乗したのは61kWhモデルの2WDと4WDモデル。eビターラには2WDのみ49kWhモデルがあるのだが、あくまでメインの販売モデルは61kWhとなりそうだ。
2WDモデルに乗り込む。インテリアもスズキテイストで、アンビエントライトも装備されるなど非常に洗練された印象。フロンクスのインテリアからひとつ先に進んだデザインで、EVらしさも感じるが「とっつきにくさ」はない。
グッとアクセルを踏み込む。試乗会場が袖ヶ浦フォレストレースウェイで路面もクリーンなのだが、まず静粛性の高さは目を見張るものがある。40km/hから80km/hあたりまでの中間加速を試してみたが、ハイブリッド車同等の加速感は好感を持てる。
ガバッと電子スロットルが開く車種も最近は多いのだが、しっかりと反力を感じるアクセルはとても好印象。回生スイッチは3段階あるのだが、日産のワンペダルのような強力な回生ブレーキは感じられない。
あくまでも「普通」に徹することがスズキの使命ともいうべきか、極端な違和感がまったくない。フロンクスやスイフトなどのスズキらしい乗り味が、そのままBEVになったという感じだ。うーん、一般道で乗ってみたいぞ。
4WDモデルはオフロードに真価あり
続いて4WDモデルに乗ってみる。すると加速感は明らかに4WDのほうが鋭い印象だ。背中を蹴られるような暴力的な加速ではない。0-100km/h加速が2WDが8.7秒に対して、4WDは7.4秒。体感でも感じられるほど差が明らか。
コーナリングについても素直なフィーリングだが、筆者にとっては2WDモデルの方がすーっと狙ったラインを曲がれるように感じた。ただコーナー明けの加速感は4WDモデルが非常に魅力的。
もちろん降雪地域であれば4WDモデルを選ぶことが多いと思うが、これであれば都心部のユーザーでも4WDを選ぶメリットはあるかもしれない。
ただ今回のサーキット試乗だけで評価するなら筆者は間違いなく2WDモデルを選ぶだろう。2周目からはパイロンが設置されたコーナーでも修正舵を入れることなく、スーッと曲がることができるのが2WDだった。もちろん旋回性能単体で見ると4WDが上だが、素直さは確実に2WDモデルに軍配があがる。
しかし4WDにはトレイルモードと呼ばれる隠し球がある。これこそが「スズキらしさ」になるのだが、簡単にいえば対角スタックなどの際に浮いたタイヤにブレーキをかけて直進をさせるモードだ。現行ジムニーなどにも搭載されるブレーキLSDと思ってほしい。
悪路走破性はかなりのものだと開発陣もにんまりしていたので、次はぜひ簡単なオフロード試乗をしてみたいものだ。それこそ4WDモデルの真骨頂だろう。










コメント
コメントの使い方