ホンダスピリットの象徴! 東京オートサロン2020で世界初公開された「シビックタイプR」改良型の詳細が、ついに明らかに!
5代目となる現行シビックタイプRは、2017年7月にデビュー。「操る喜び」をキーワードに、サーキットから市街地まで、様々なシーンに応じた高いパフォーマンスで大好評となっているモデルだ。
過去のタイプRは、足をガチガチにしてサーキットタイムを競う設計であったが、現行型は、一般道での乗り心地も確保したモデルとして評判が高かった。
今回マイナーチェンジを行ったシビックタイプRでは、その「走り」により一層の磨きをかけた。
また、タイプRの起源に立ち返って軽量化と専用装備で武装した、国内限定200台レアモデル「シビックタイプR リミテッドエディション」も合わせて追加される。
文:吉川賢一
写真:奥隅圭之、HONDA
【画像ギャラリー】現行型最後!? シビックタイプR 改良型&最強「リミテッドエディション」の更なる詳細!!
タイプRはどこが変わった? 走りを磨く足回りも進化!!

まずは本田技術研究所の主任研究員で、シビックタイプR 開発責任者・柿沼秀樹氏のプレゼンテーションで明らかになった、進化のポイントをご紹介しよう。
サーキット性能の進化として、エンジン冷却性能の向上のためにグリル開口部を拡大(現行比+13%)し、さらに、ラジエーターのフィンピッチを狭めて風のあたる面積も拡大。これによって、約10℃も温度上昇を抑制できる、という。
空力性能改善として、フロントエアスポイラーの形状を変更。さらに、高速ブレーキ時のディスク倒れを抑制するため、1ピースから2ピースディスクへ構造変更したそう。鈴鹿サーキットで効果検証をした結果、ヘヤピンやシケインといった連続走行時の踏力変化を、3割~5割抑制できたという。
サスペンションへも手が加えられている。「アダプティブダンパーシステム」をアップデートし、ロールやピッチの姿勢制御を更に進化させた。センサーサンプリング周波数を2kHzから20kHzへ増やし、これまで拾ってしまっていたノイズの分解能があがったことで、よりきめ細かな制御が可能となった、という。

また、フロントロアボールジョイントのフリクション低減、フロントコンプライアンスブッシュの高減衰化により、フロントサス前後剛性を10%UPし、タイヤ支持剛性を高めて接地感とダイレクト感を向上、さらにはリアロアアームBブッシュの硬度をアップし、リア横剛性を8%UP、横力トーイン量も増加させた。
インテリアの変更点は、操作系素材の質感統一として、アルカンターラ表皮のステアリングホイールを採用。従来の本革ステアリングと握りの外径を揃えるため、アルカンターラ表皮の下に2重の裏地を入れ、握りの質感とフィット感を向上させている。
また、シフトノブも、これまでの球体からティアドロップ型へと変更、内部にはカウンターウェイトをいれ、操作機能性を向上させた。これまでのトランスミッションだと、シフトミスすることがごく稀にあったため、シフトノブ内部に仕込んだカウンターウェイトでしっかり感を出したかったということだ。
あのイエローが蘇る!! 軽量化版「リミテッドエディション」も投入

そして、今回限定車としてシビックタイプR「リミテッドエディション」専用で、車体各部に軽量化を織り込んだ。
防音材撤去や構造合理化により、マイナス13kg、鍛造ホイールでマイナス10kg、トータルで23kgの軽量化を実現した。
BBSと共同開発した新型の20インチ鍛造ホイールは、BBSの鍛造ならではの「しなる特性」を利用し、コーナリング中にギャップを乗り越えてもグリップが抜けないように狙ったという。実際、サーキットでの検証実験では、ドライバーから大好評だったそうだ。
なおリム厚は、現行比25%も低減した最薄リム厚を実現した。タイヤは本グレード専用として、ミシュラン パイロットスポーツカップ2を採用している。
エンジンは不変! 注目の発売時期は??

今回は、エンジンや、開口部を広げたグリルと、フロントエアスポイラーを除いては、ボディのエアロダイナミクスについて手を入れていない。従来型タイプRの出来が良いため、微修正程度でも、充分な戦闘力がある、というホンダの意思の表れなのだろう。
この仕様で、ニュルブルクリンクのタイムアタックも行われていくと考えられる。現時点、時期は未定だが、関係者いわく「FF最速となるのは当たり前」なのだそうだ。
シビックタイプR マイナーチェンジモデルの発売時期は2020年夏、リミテッドエディションは2020年秋の発売が予定されている。
現在のタイプRの価格は458万3700円。細かな変更点が多いマイナーチェンジモデルは、若干値上がりすると考えられる。
「リミテッドエディション」では23kg軽量化や、専用の鍛造ホイールを装備しているため、プラス50万円程度となるのではないか、と筆者は予想している。
現行型はこれが最後!? 気になるタイプRの今後

現在日本で売られているシビックは、ハッチバックとタイプRがイギリス製、セダンは日本の寄居工場製だ。タイプRは、歴代モデルの多くがイギリスで生産されてきたという歴史をもっている。
しかし、イギリスがEUから離脱する影響を受け、イギリスに工場を持つ各自動車メーカーは、欧州での生産拠点をイギリスから離れる算段をしており、ホンダも2021年で英国工場を閉鎖する方針を発表している。
関係者によると、「現行型シビックタイプRは最後まで英国工場で作る計画」だという。
ということは、必然的に、次の改良モデルを開発して発売するほどの時間的余裕はなく、本モデルが「現行型シビックタイプRの最終仕様」となる。

現行シビックは、米国(インディアナ州)、カナダ、ブラジル、トルコ、中国、タイ、マレーシア、パキスタンなど、ワールドワイドで生産されている。
英国に最も近いのはトルコ工場(生産能力5万台/年)だが、年間15万台レベルで生産していた英国工場をカバーできるだけの能力はないと考えられる。
となると、世界の工場「中国」が浮上してくる。(※ちなみにシビックを生産しているホンダの中国工場は湖北省武漢市にある)。
昨今の中国生産品の品質は高く、性能は折り紙付きだとはいえ、英国生産でなくなってしまう「シビックタイプR」と聞くと、皆さんはどのように感じるだろうか。
マイナーチェンジモデルのシビックタイプRの走行インプレッションが明らかになってくるのは夏前ごろとなるだろう。一体どれほど走行フィーリングが向上しているのか、非常に楽しみである。
■シビックタイプR マイナーチェンジモデル 主要諸元(※編集部調べ)
全長×全幅×全高:4560×1875×1435mm
ホイールベース:2700mm
エンジン:直列4気筒ターボ、1995cc
最高出力:320ps/6500rpm
最大トルク:40.8kgm/2500-4500rpm
JC08モード燃費:13.0km/L
価格:未発表
※スペックは変更になる可能性があります。