本田技研工業創立50周年を記念して1998年に発売されたS2000。S800以来、29年ぶりとなったホンダFRスポーツの復活モデルだ。
実に手の込んだつくりで、二度と市場に登場しないかもしれない名車のひとつ。今ならまだ中古で手に入れて楽しむことができるぞ!
文:永田恵一/写真:茂呂幸正
ベストカー2017年3月26日号
初期型の2Lか、それとも後期型の2.2Lか?
もはや二度と出ることはないだろうと思われるホンダ製FRを手に入れるなら今のうちだ。
1995年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー、「SSM」を経て1999年に市販化されたS2000は、ホンダの創立50周年記念車でもあるリアルFRオープンスポーツ。
レーシングエンジン並みの9000回転まで回る2L直4エンジンを搭載し、2005年まで販売されたAP1型から2.2Lに排気量アップしたAP2型への移行を筆頭に、幾度もの改良を重ねて10年という節目となる2009年に生産を終了している。
ファンの間ではいまだに大人気となっており、いいタマは驚くほど高い中古車価格をキープしているほどだ。
S2000がAP2型になった時、すでに私は国沢光宏師匠の弟子になっており、ちょうど現役時代のAP2型に乗る機会を持てた。
記憶に残っているAP2型の印象は「2.2Lの初期は高回転域がガサツだったけど、最終モデルでだいぶ改善されたなあ」というもの。
実はAP1型には初期型に乗ったことがあったが、ノーマルではなく、足回りを煮詰めた個体だった。
残念ながらエンジンは回せなかったものの、チューニングの効果で峠道を流しているだけで「このクルマ、凄い旋回性能がありそう」とゾクゾクするものを感じた記憶が残っている。
で、今回久しぶりに乗ったS2000は、なんとVGS搭載車!
VGSとは可変ギヤレシオステアリングの元祖で、簡単にいえば低速ではカートのように少ない操作で大きくタイヤが切れ、高速ではふつうのクルマと同じようにタイヤが動くというものだ。
低速でむやみにハンドルを回すと内側に巻き込む恐れがあるので、試乗にあたっては注意しながら動きを確認。
珠玉の2Lエンジンは当時から指摘されていたとおり低速トルクの細さが気になったが、シビックなどに搭載されたB型の軽さに重厚感をミックスしたような上質な回転フィールを伴いながらの吹け上がり。
9000回転のレッドゾーンに向けてのフィナーレでは、エクスタシーとしかいいようのない快感を味わわせてくれた。
ただ、S2000のポテンシャルを公道で存分に楽しむのは難しい。エンジン、コーナリングをフルに楽しみたいなら、クローズドコースが必要だ。
ここまでピュアなクルマであることには好みが分かれるだろうけど、逆にこんなクルマが今後出てくる可能性はゼロに近い。少しでも興味があるなら、ぜひ自分のものにすることをおすすめしたい。
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