安定志向のセダン、曲げのハッチバック
シビックのセダンとハッチバックを乗り比べてもっとも驚いたのがその乗り味。まったくもって異なるのだ。
セダンはどちらかというと安定志向。直進性能は抜群でコーナリングではあくまでも安定感が優位に立つ。いっぽうのハッチバックはコーナリングでリアも一体に巻き込むような動きを見せ、グイグイ曲がる印象を受けた。
安定のセダンと、曲げのハッチバック。この2台の差はかなり大きく、同じプラットフォームを使ったクルマとは思えないほど味付けが異なる。
スペックもセダンの173psに対してハッチバックは182psと9psほど差がある。ハッチバックはパワーアップもさることながら、センター出しのマフラーなど、かなり若者ウケを気にしている印象を受ける。
プラットフォームは軽量化にも貢献している。先代比でセダンは22kg、ハッチバックは16kgも軽量化。しかし剛性はセダンで25%、ハッチバックで52%も向上しており、より軽くそしてよりガッシリした骨格を得たのだ。
セダンもハッチバックもこれまでの「標準的な存在」を目指したシビックではないのはたしか。
エンジンフィールにすごく華があるわけではないが、シビックのノーマルモデルはこれくらいでもいいのでは? とも思わせるだけの落ち着きがある。
そうはいってもホンダ社内でも北米のホットグレード「Si」(1.5Lの205ps)を日本に入れるべきという声もあったそうだが、それは今後のニーズ次第だそう。
しかしハッチバックに6MTの設定があるのはホンダとしては思い切った決断のはず。今回はCVTのみの試乗だったが、6MTで操る1.5Lターボの乗り味も楽しみだ。
デザイン面はかなりアグレッシブだ。セダンもハッチバックもどちらもクーペ風のスタイリングで、グリルは前傾姿勢のデザインになっている。
デザイン担当者が「直球勝負した」というほど個性も強く、タイプRまで見据えた「ゼロからの設計」がデザイン面でも随所に活きている。「ロー&ワイド」のシビックはいまの若者の目にはどう映るだろうか?
気になるタイプRの新事実とは!?
タイプRの試乗は「お預け」となったが、いろいろと新事実が発覚してきた。
まず出力に関して。先代のFK2型タイプRは310psを発揮していたが、新型では確実に馬力は上がることが発表された。ベストカーでは20ps前後の出力向上と見ている。
最終型のNSXタイプRよりも速いニュルブルクリンクのラップタイムを刻んだ新型シビックタイプRだが、実は300psを超える馬力はシュミレーションでは不要だったそう。これは本田技術研究所の四輪R&Dセンター長の三部敏宏氏が明言した。
「実は先代の開発の頃から280psくらいをタイプRの目標値にしてたんです。それが効率よく走れるという解析だったんです。
それでも開発陣が300ps以上を出して、妥協なくタイムを狙いたいと直談判してきて。ニュルブルクリンクの最速タイムを出すこと、それを大きな目標にしてきました。
新型になった以上は旧型のスペックを上回る必要があるとのことで、これまた開発陣の直談判を受けました。
でも先代タイプRよりも7秒も速い記録は、それはパワーアップしたエンジンユニットよりも新型プラットフォームの効果が大きいです。
古いプラットフォームにパッチをあてて補修していくのでは限界がありましたから、この新プラットフォームをタイプRの使用まで前提にして設計できたことは大きな収穫です」。
またタイムアタック当日の様子も知ることができた。ホンダが公開したタイムアタックの動画ではドライバーの安全確保の理由からロールケージを装着している。
しかしこれは剛性には寄与しないように設置されており、ロールケージ装着による重量増も調整して市販車スペックと完全に同じくしているという。
日産GT-Rがポルシェなどとニュルブルクリンク最速タイムに関して一悶着あったとされるが、現在シビックタイプRはルノー、そしてVWと同カテゴリーでFF市販車最速を競っている。それだけにかなり神経を尖らせているようだった。
タイプRの本気、そしてシビック日本導入へのホンダの意気込みを感じた試乗会だった。
7月下旬には正式発表となるシビック。ぜひホンダ党、そして従来からのシビックファンの皆さんに「乗らず嫌い」をせず、どんどんと試乗してほしい!!
ニュルブルクリンクFF市販車最速タイム更新の様子はこちら!!
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