いよいよスズキ・スイフトに「フルハイブリッド」が登場しました。
しかし2016年12月に登場した現行スイフトにはすでに「マイルドハイブリッド」が用意されています。今回新たに登場した「フル(ストロング)ハイブリッド」はどこがどう違うの? どっちが買いなの?
ここでは両仕様の違いを整理しつつ、ラリードライバーにして自動車ジャーナリストの竹平素信氏にインプレッションを伺いました。
文:竹平素信、ベストカー編集部 写真:池之平昌信
ベストカー2017年9月10日号
■ガソリン代で元を取るのは無理(by編集部)
まずスイフトのグレード構成を簡単に整理すると、現行型のスイフト(4代目)は2016年12月に発表されている。このスイフトにもハイブリッド仕様は用意されており、こちらは「マイルドハイブリッド」版で燃費は27.4km/L(JC08モード)。
そして2017年7月に追加設定されたのが、「フル(ストロング)ハイブリッド」版です。こちらの燃費は32.0km/L(同JC08モード)。
この2種類のハイブリッド仕様を用意する手法はソリオでも実践済みなのですが、しかしスイフトの場合、「マイルド」と「フル」の価格差は実に22万7880円(エコカー減税を考慮すると19万4580円)。
ここまで価格差があると「燃費がいいほうがお得」とも言い切れない(ガソリン代で元をとろうと思ったら20万㎞以上走ることになる)。
(編集部註/装備差を揃えるため、スイフトMLセーフティパッケージ装着車(2WD)172万1520円とスイフトSL194万9400円を比較しました)
つまり「ハイブリッドがいい」、「燃費のいいグレードのほうがいい」という観点では、今回新設定された「フルハイブリッド」版を選ぶ理由はないことになる。
「いや、そうじゃないんじゃ」(←本当にこう言う)と語るのが、竹平素信氏。
■加速の「谷」をモーターがカバー(by竹平素信)
スイフトハイブリッド、なかなかいいじゃないか。
このクルマの一番の特徴はトランスミッションに5速のAGS(オートギアシフト)を採用していること。トヨタのアクアやヴィッツは電気式無段変速を使うが、ホンダのフィットはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)、スイフトのマイルドハイブリッドはCVTを採用している。
つまり、コンパクトハイブリッド車は数あれど、トランスミッションは色々違う。
ではこのスイフト(フル)ハイブリッドはどうか? AGSというと、期待の大きかったアルトターボRSのギクシャクした加速フィーリングによって、評判を落としたが、スイフトハイブリッドの印象はぜんぜん違う。
そもそもAGSの加速フィールがよくないのは、クラッチが切れ、次のギアにアップする瞬間にトルクの「谷」ができてしまうこと。この弱点をスイフトハイブリッドは、駆動用モーターがアシストすることで、滑らかな加速を手に入れたというわけだ。
CVTよりもダイレクト感があってワインディングなどもけっこう楽しいぞ。ただ、リチウムイオンバッテリーの容量が小さいから、ベタ踏みの加速や登り坂ではアシストしにくくなり、多少段付きが出る。
もっともそれも、カッ飛ばすワシのような者だけが感じる不満かもしれんが……。
いずれにしても走りを楽しむハイブリッドとしては、これまでにない存在。特にスイフト「マイルド」ハイブリッドの走行性能に「うーん、もうひと味ほしい」と思っていた方は多いのではないか。燃費うんぬん、経済性うんぬんはまあ気にはなるけどちょっと脇に置いておいて、と。
そういう人に、このスイフト「フル」ハイブリッドはストライクだろう。ベーシックだが、パワートレーンは一緒のSG(166万8600円)はスイフトの〝のり弁〟としてオススメじゃ。
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