新型N-ONEは「台数は追わずに定着を目指す」
また、開発者は「N-ONEは1世代だけ造ってもダメ。同じデザイン路線でフルモデルチェンジを行って、N360から繋がる系譜を築く必要がある」とコメントした。
N360を知っている世代が見れば、ホンダの独創性に基づいて開発された最初のクルマだから、これをモチーフにN-ONEを造ったと理解できる。
しかし、N360を知らない若い人達はどう思うのか。N-BOXやN-WGNに比べると、開発意図が分かりにくい。オシャレでカッコイイと思う人もいるだろうが、「何だか良く分からないクルマ」という見方もされそうだ。
そのために先代N-ONEの販売推移を振り返ると、発売の翌年となる2013年には、1か月平均で約9000台が届け出された。それが2013年末に先代N-WGNが登場すると、ユーザーを奪われて2014年の届け出台数は1か月平均で2900台であった。
発売後1年で、わずか32%まで激減したのだから、先代N-ONEは販売面で身内の先代N-WGNに惨敗したことになる。
それならN-ONEを廃止すれば良い、という考えもあっただろうが、簡単に諦めたら個性的なクルマは育たない。そこで「N-ONEは1世代だけ造ってもダメ。N360から繋がる系譜を築く」判断に至った。
また、ホンダの出発点になるN360をモチーフに商品を開発して、それを売れずに1世代で諦めたら不謹慎でもあるだろう。好調に売れるのはN-BOXでも、N-ONEはNシリーズの象徴と考えて、台数は追わずに定着を目指す判断だ。
高価で目標台数も控えめ!? 新型N-ONEを売るホンダの狙いは?
開発者に今後の売れ行きについて尋ねると「1か月に2000台くらいのイメージだろう」という。
N-BOXの直近の届け出台数は、1か月に約1万7000台、N-WGNは7000台前後だ。この2車種に比べると、N-ONEの2000台は、イメージとはいえかなり少ない。
ライバル車について尋ねると「ライバル車はいないが、台数的にいえば、アルトラパンとかミラココア」という。2020年8/9月に、アルトラパンは1か月当たり約2000台、ミラトコットは1000台弱を届け出している。
そこで1か月に2000台なのだが、あくまでも目安で、少しずつN-ONEの認知度を深めていく戦略だ。電気自動車のホンダeも、N-ONEと同じデザイン路線だから、ホンダのブランドに通じる商品でもある。
こういった流れを受けて、新型N-ONEにも伝統のRSがあり、S660やN-VANで採用された6速MTも設定している。
価格は売れ行きの伸び悩みを考慮に入れたのか、高めになった。N-ONEにノーマルエンジンを搭載した上級グレードの「プレミアム」は177万9800円だ。
同等レベルの装備を採用するN-WGNカスタム「Lホンダセンシング」は161万7000円だから、N-ONEは約16万円高い。
N-ONEはフルモデルチェンジしたのに外観の変化が乏しく、スライドドアはなく、ハスラーやタフトのようなSUVでもない。加えて価格は高い。売れる見込みは乏しいが、オジサン世代から見ると、ちょっと安心させるところがある。
最近のホンダは、昔とは違う企業になったように思えたが、N-ONE「RS」は、初代シビック「RS」を見ているような気分にさせる。サイズ感は確かに近い。
商業的には、ハスラーやスペーシアギアのライバル車を開発した方が効果的だが、N-ONEはホンダの国内販売にとって、一種のスタビライザーなのかもしれない。本稿を執筆していたら、N-ONE「RS」が欲しくなってきた。
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