あえて逆張り!? “個性派軽”新型N-ONEに勝機はあるか

 見た目は従来型とほぼ同じ! ホンダの個性派軽自動車、新型N-ONEが明日11月20日発売!

 国内市場で年々販売比率が高まる軽自動車。なかでも最近人気を集めているのが「スーパーハイトワゴン」と呼ばれる、背の高い軽自動車だ。

 ホンダから発売されているN-BOXは、目下日本一売れている車となっている。また、スズキ ハスラーを筆頭としたクロスオーバーも人気を集めている。

 今回モデルチェンジしたN-ONEは、そうしたメインストリームとは異なるコンセプトの個性派。あえてトレンドではない新型N-ONEを送り出したホンダの狙いと勝機は?

文/渡辺陽一郎、写真/奥隅圭之

【画像ギャラリー】発売開始されたホンダ新型N-ONEの内外装をチェック!!


従来型と見分けが付かない? 新型N-ONE登場の訳

 これがフルモデルチェンジ!? と驚いたのが新型N-ONEだ。フルモデルチェンジは高いコストを費やす最強の販売促進対策だから、通常は変化したことを積極的に表現する。

 今はデザインが急速に進化した昔に比べると、フルモデルチェンジの変化度合いが小さいが、それでも新旧の見分けが付くように開発する。

2020年11月に発売開始した新型N-ONE。軽自動車初LEDデイタイムランニングランプを搭載

 それなのに新型N-ONEは、ヘッドランプ、フロントグリル、テールランプの形状が少し変わったものの、新旧の見分けがほとんど付かない。

 このようなフルモデルチェンジを行った一番の理由は、新型、先代型ともに、N-ONEが1967年に発売されたN360をモチーフに開発されているからだ。

 BMWミニにも当てはまるが、古いクルマをモチーフにすると、そこから脱却できない。フルモデルチェンジを行っても変化が乏しくなる。

N-ONEは、ホンダN360をモチーフとし開発された。新旧モデルを比較すると、見分けがあまりつかない

 特にN-ONEは軽自動車だから、ボディサイズを変えられない。ベースになったN-BOXは、新旧ともにホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2520mmだから、N-ONEもこの数値を踏襲する。このような事情から、変わり映えのしないフルモデルチェンジとなった。

 ホンダでは、新型N-BOXを「タイムレスデザイン」と表現している。時代が変わっても、変化する必要のない普遍的なデザインという意味だ。N-ONEは確かにタイムレスだが、N360をモチーフに開発すれば、必然的にそうなったとも受け取られる。

新型N-ONEは「台数は追わずに定着を目指す」

N360は、1966年に開催された東京モーターショーで発表、1967年から1971年まで販売していた

 また、開発者は「N-ONEは1世代だけ造ってもダメ。同じデザイン路線でフルモデルチェンジを行って、N360から繋がる系譜を築く必要がある」とコメントした。

 N360を知っている世代が見れば、ホンダの独創性に基づいて開発された最初のクルマだから、これをモチーフにN-ONEを造ったと理解できる。

 しかし、N360を知らない若い人達はどう思うのか。N-BOXやN-WGNに比べると、開発意図が分かりにくい。オシャレでカッコイイと思う人もいるだろうが、「何だか良く分からないクルマ」という見方もされそうだ。

 そのために先代N-ONEの販売推移を振り返ると、発売の翌年となる2013年には、1か月平均で約9000台が届け出された。それが2013年末に先代N-WGNが登場すると、ユーザーを奪われて2014年の届け出台数は1か月平均で2900台であった。

 発売後1年で、わずか32%まで激減したのだから、先代N-ONEは販売面で身内の先代N-WGNに惨敗したことになる。

軽自動車シリーズ「Nシリーズ」第3弾として誕生した初代N-ONE(販売時期:2012年~2020年)

 それならN-ONEを廃止すれば良い、という考えもあっただろうが、簡単に諦めたら個性的なクルマは育たない。そこで「N-ONEは1世代だけ造ってもダメ。N360から繋がる系譜を築く」判断に至った。

 また、ホンダの出発点になるN360をモチーフに商品を開発して、それを売れずに1世代で諦めたら不謹慎でもあるだろう。好調に売れるのはN-BOXでも、N-ONEはNシリーズの象徴と考えて、台数は追わずに定着を目指す判断だ。

高価で目標台数も控えめ!? 新型N-ONEを売るホンダの狙いは?

 開発者に今後の売れ行きについて尋ねると「1か月に2000台くらいのイメージだろう」という。

 N-BOXの直近の届け出台数は、1か月に約1万7000台、N-WGNは7000台前後だ。この2車種に比べると、N-ONEの2000台は、イメージとはいえかなり少ない。

 ライバル車について尋ねると「ライバル車はいないが、台数的にいえば、アルトラパンとかミラココア」という。2020年8/9月に、アルトラパンは1か月当たり約2000台、ミラトコットは1000台弱を届け出している。

 そこで1か月に2000台なのだが、あくまでも目安で、少しずつN-ONEの認知度を深めていく戦略だ。電気自動車のホンダeも、N-ONEと同じデザイン路線だから、ホンダのブランドに通じる商品でもある。

新型N-ONE RSには、軽自動車初のFFターボと6速MTが設定された

 こういった流れを受けて、新型N-ONEにも伝統のRSがあり、S660やN-VANで採用された6速MTも設定している。

 価格は売れ行きの伸び悩みを考慮に入れたのか、高めになった。N-ONEにノーマルエンジンを搭載した上級グレードの「プレミアム」は177万9800円だ。

 同等レベルの装備を採用するN-WGNカスタム「Lホンダセンシング」は161万7000円だから、N-ONEは約16万円高い。

新型N-ONEにも純正アクセサリーが用意されている(写真グレード:プレミアムツアラー/色:ブリティッシュグリーン・パール・シルバー)

 N-ONEはフルモデルチェンジしたのに外観の変化が乏しく、スライドドアはなく、ハスラーやタフトのようなSUVでもない。加えて価格は高い。売れる見込みは乏しいが、オジサン世代から見ると、ちょっと安心させるところがある。

 最近のホンダは、昔とは違う企業になったように思えたが、N-ONE「RS」は、初代シビック「RS」を見ているような気分にさせる。サイズ感は確かに近い。

 商業的には、ハスラーやスペーシアギアのライバル車を開発した方が効果的だが、N-ONEはホンダの国内販売にとって、一種のスタビライザーなのかもしれない。本稿を執筆していたら、N-ONE「RS」が欲しくなってきた。

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