■最新の画像センサーにも手ごわい相手…だが…
それにしても、こういう反射率ほぼゼロのステルス機みたいな塗装が出現すると、自動ブレーキ用のカメラやレーダーがどう反応するのかがちょっと懸念される。
カメラについては、人の目と同じ原理で対象物からの反射光を捉えてクルマをして認識するわけだから、反射率1%以下では最新の画像センサーにとっても手ごわい存在だ。
現実には闇夜でライトを消して走るわけではなく、必ず光源があって背景とのコントラストによって「真っ黒なクルマ」として認識されるのだが、それでも明るい色のクルマに比べたら認識精度は低下しそう。
大昔のメルセデスのカタログには、「安全のためには白や黄色など明るい色を推奨します」という記述があったが、いくら自動ブレーキが進化しても真っ黒なクルマは視認性の点で不利となるのは否定できないだろう。
自動ブレーキのもうひとつの重要なセンサーであるミリ波レーダーについては、同じ電磁波でも光よりだいぶ波長が長いため、カーボンナノチューブによる減衰の影響は少ないと思われる。
というか、もしこの塗装がXバンドとかKバンドのレーダー電波を効率的に吸収したら、それは高性能なステルス塗装。そうなったら軍事方面が放っておかないはずだ。
まぁ、ぼくのヤマ感的な予想ではあるんだけど、自動ブレーキへの影響は(ゼロではないにしても、気にしなくていいほどには)あんまり心配しなくてもいい気がいたします。
(編集部注/BMWの公式発表リリースによると、夜間でのカメラへの悪影響についての記述はなかったが、しかしこのVANTAブラックは「昼間の日光入射が車載カメラに悪影響を及ぼさないよう、先進安全技術の一部として採用されている」と説明しています)
それより、もしこの塗装が実用化した場合の現実的な欠点としては、夏めちゃくちゃ暑いのでは?という問題の方だろう。
前述のとおり、ナノチューブ内に入射した光は熱に変わって消滅する。ということは、入射した光の99%が熱に変わっているわけで、つまりめっちゃボディが熱くなるってことですよ。
やっぱりこの塗装、航空宇宙用途にはアリだけど、クルマの塗装としては実用的じゃなような気がするなぁ。
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