日産 フェアレディZ 初代432-R&50周年記念モデルが歴史的ランデブー!!!

■尽きないZへの思い

「ひと目惚れでした」竹内章さんが語るのは、自動車好きにはよくあるクルマとの出会いだった。通りがかりの中古車店でその姿を見て購入を即決した。

 表示価格は当時の年収の約2倍320万円(!)。しかし揺るがなかったという。

「それまでフェアレディZというクルマに取り立てて関心はなかったんです。あれから39年になりますが、今では生活の中心ですね(笑)」

 フェアレディZ432-Rは、ただでさえ稀少な432の競技用限定版として位置づけられる。

●初代フェアレディZ432-R

「4バルブ、3キャブレター、2カムシャフト」を意味する「432」。R仕様はそのモータースポーツ専用車として50台生産され、今も約20台が現存しているという。
ヒーター、ラジオはもちろんグローブボックスの蓋もない硬派な仕様で、432よりも約100kgの軽量化を実現。全長4110×全幅1630×全高1280mm、車重960kgで、FRP製の黒いボンネットがR仕様の証となる

 全生産50台の内20台は日産ワークスが使用。残りは市販され、どういう経緯かナンバー付きが約20台現存しているという。

 私が432-Rの実物を見るのはこれが生涯初である。グランプリオレンジの専用色にマットブラックのFPRボンネット。

 懐かしデザインのマグネシウムホイールを履く。内装ではグローブボックス、外観では給油口の蓋さえ廃し徹底した軽量化が遂行されているが、トランクには645-14バイアスタイヤ+鉄ちんホイールが鎮座する。

美しく磨かれた竹内Z432-Rのエンジンルーム。S20型直6DOHCエンジンを搭載し、160ps/18.0kgmを発生した。サスペンションは510ブルーバードの前後ストラット4輪独立懸架を使っている

 当時はバイアスタイヤが主流。S30ZもPGC10GT-Rもそれが標準装着だったが、そこまでオリジナルにこだわる?

「6年前にレストアしました。有鉛ガソリンとOKマークのシールですか? 再現復刻版が市販されているんですよ」

 絵になるフルレストアは、現行34Zとのツーショットでは“何も盛っていない”素の美しさを際立たせる一方で、後戻りができない過去のスケール感への郷愁を掻き立てる。

 傍らで目を細めるのは昭和のZ使い柳田春人。その名が知れ渡るレジェンドに敬称は不要だろう。

インパネセンター上に置かれる3連メーターはZの伝統。上が初代Z、下が現行Zのメーターだ

 私は1973年、まだ富士SWがバンク付きの6kmフルコースだった時代に現役時代の柳田春人を見ている。

 グループ7の2L GC(グランチャンピオン)マシンとZ中心の3L GTSクラスとの混走。

 雨のGCを制したレースの記憶は曖昧だが、日産レーシングスクールを受講した際に面識はあったかもしれない。

 無名時代の鈴木亜久里を日産に引っ張ったのは柳田さん。1985年までモータースポーツ記者会に属していた私は今はなき『O3』で両者の関係を知った。

 ちなみに私個人としては、その年にシルエットフォーミュラのブルーバード、グループCのLM03=コカコーラターボCに試乗する取材機会で知己を得ていた。

「柳田さんのZにはスクリューが付いているんですか? って冗談を言われたこともあるけど、240Zが雨中でGCマシンにアドバンテージを持っていたのは確かだね」

●日産 現行フェアレディZ 50thアニバーサリー

50周年を記念して作られた現行Zの特別仕様車。2020年3月末までの期間限定車で、価格は458万8920円(6MT)。
全長4260×全幅1845×全高1315mm、車重1500kg。V6、3.7Lは336ps/37.2㎏mを発生する

 チューニング界では最終的に3L超+ターボまでスケールアップされたL型直6だが「レースでは2.8Lだとトルクが出過ぎてかえって乗りにくい。それでボアアップは2.6Lに戻したんだ」

 今回取材した432-R。「俺このマシンでブラジルに遠征しているよ。1979年20歳の時だったかな。

ボンネット下のS20を見た現地の人がこれ何Lって聞くから、2Lだよと答えると目を丸くしていた。確かにヘッドカバーの大きさで見ると3~4Lの雰囲気だよね」

 今回の取材で顔を揃えた3人はいずれも還暦過ぎのオッサンだが、50年のロングライフを生きるZのルーツに熱い思いを寄せることでは人後に落ちない。

 S30の楽々5ナンバーに収まるスリーク&ライトウェイトボディは、クルマの技術と性能が人(の能力)に近かったあの時代ならではだったことに、今さらながら気づかされる。

 今回取材の足にマツダロードスター(ND)を使ったのは偶然だが、ソレックス3連で160psを得るS20とロードスターの1.5Lは現行の測定法ではほぼ同等。車両重量も近似値にある。

「重ステ/エアコンレスは毎日が修行ですが、今も年間8000kmは走ります。ライフワークですね(笑)」と竹内さん。

 今年最高気温(?)に見舞われたこの日。Z好きの談笑は尽きることがなかった。


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