当初11月下旬から来年2月へと発売開始が先送りとなったフィット。これによりトヨタのヤリス、ホンダのフィットがともに12月発表、来年2月発売という運びになった。平成の時代から鎬(しのぎ)を削ってきた2台だけに、因縁めいたものを感じずにはいられない。
フィットのサイズはまだ未発表、価格はどちらも未発表で、両車ともに未試乗の状態ではあるが、静止状態でも見て座ってみれば、わかることはたくさんある。
永遠のライバル2車を自動車評論家・渡辺陽一郎氏が解説&比較。購入計画のご参考にぜひ!
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※本稿は2019年11月のものです
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年12月10日号
■ボディサイズは同等でも、中身はこんなに違う!!
●視界
両車のボディサイズは同程度だが、斜め後方の視界はフィットが少し勝る。前方視界は同等だ。
ヤリスはフロントピラーを手前に引き寄せ、フィットは細くして、前方視界を向上させた。視界の勝負は、後方の違いでフィットの勝ちになる。
●内装・居住性
内装の質と居住性は、前席と後席を分けて比べる。まずインパネは、ヤリスが平凡な形状ながら上質だ。フィットは開放感を伴うが、ハンドルも2本スポークで個性的だが質感は高くない。
前席の座り心地は同等だ。両車とも腰から大腿部をしっかりと支えて座り心地がよく、長距離移動でも疲れにくい。インパネの質の違いにより、前席はヤリスの勝ちだ。
後席はヤリスが狭い。現行ヴィッツと比べても、足下空間が狭まった。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、ヴィッツが握りコブシふたつ分でヤリスはひとつ半。
前後席に座る乗員同士の間隔もヤリスはヴィッツを37mm下回る。さらに床と座面の間隔も32mm減ったから、腰が落ち込み膝の持ち上がる座り方になる。
フィットの後席乗員の膝先空間は、ヤリスと同じ測り方で握りコブシふたつ半だ。明らかに広く、着座姿勢もちょうどいい。
荷室もフィットが広い。燃料タンクを前席の下に搭載して荷室の床を低く抑え、リアゲートの角度は立てたからだ。ヤリスの荷室面積にも不満はないが、フィットよりは狭く、リアゲートも寝かせたから積載容量が下回る。
従って後席と荷室はフィットの圧勝だ。ちなみにヤリスはヴィッツに比べてホイールベースを40mm延ばしたが、前輪を前側へ移動させているので、後席と荷室には反映されていない。
今後はヤリスのプラットフォームを使って、かつてのファンカーゴのような天井の高い小型車を開発する計画もあり、ヤリスは前席優先になった。
●エンジン
エンジンは両車ともノーマルタイプとハイブリッドを用意する。
ヤリスは新開発の直3、1.5Lとこのハイブリッド仕様、従来から設定されていた直3、1Lを搭載する。1.5Lはヴィッツの1.3Lと比べて、動力性能と燃費が勝る。その代わり1L車の価格は、1.5Lに比べて15万~20万円安くなるようだ。
フィットは直4の1.3Lと1.5Lハイブリッドを設定する。ハイブリッドはエンジンが発電機を作動させ、その電気を使ってふたつのモーターを駆動する方式だ。
エンジンは主に発電を担当するから、回転数が速度の増減に左右されにくい。高効率な回転域を使えるため、燃費をいっそう節約できる。モーター駆動だから、加速が滑らかで瞬発力も高い。
●走行安定性
走行安定性はプラットフォームを刷新したヤリスに期待したい。そうなるとヤリスの1.5L車は、動力性能と安定性が優れ、車内は前席優先だから、1~2名で乗車するクルマ好きのユーザーにピッタリだ。
一方フィットは、後席と荷室が広いから、ファミリー層に適する。ハイブリッドを選ぶと、上質な走りを味わえて燃料代も節約できる。
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以上のようにヤリスとフィットは同じカテゴリーに属するが、クルマの性格はかなり違うのだ。
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