【新生マツダのシンボル2車種に暗雲!? 光明!??】マツダ3&CX-30の評価と課題

 マツダは2019年に期待の新型2モデルを送り出した。5月に発売した「アクセラ(日本名)」改め「マツダ3」と、10月に発売した「CX-3」と「CX-5」の中間を狙った「CX-30」だ。

 プラットフォームは共用化した最新のものを使用、ディーゼルのような圧縮着火を併用する新しいガソリンエンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブX)」も搭載した。マツダとしては、これでもかと新世代SKYACTIV技術を注ぎ込んでいる。

 そこまで気合が入ったモデルならば、さぞ販売面も……と思うのだが、そう上手くはいっていないこともあるようだ。発売からマツダ3は8カ月、CX-30は3カ月経った今の販売に関する成績をチェックしていきたいと思う。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部

【画像ギャラリー】今回チャックした2モデルの内外装と、追加されたCX-30のSKYACTIV-X搭載車のスペックまで紹介


■2019年10月から販売成績が急落したマツダ3

 2019年はマツダが話題になることの多い年だった。5月にミドルサイズカーの「マツダ3」、10月にはコンパクトSUVの「CX-30」を発売したからだ。両車のカテゴリーは異なるが、エンジンやプラットフォームは共通化されている。

高級ブランド化を狙うマツダの戦略として、日本名の「アクセラ」を捨て「マツダ3」に変更

 今のマツダの車種数は、軽自動車などのOEM車を除くと8モデルに限られるから、マイナーチェンジだけで新型車が登場しない年もある。新型車が2車種発売された2019年は盛況であった。そこで、マツダ3とCX-30の売れ行きを改めて見てみよう。

 まずマツダ3の登録台数は、発売の翌月となる2019年6月は1591台だったが、7月は3668台、8月は3916台に増えた。9月は7533台を登録して、フィット、フリード、タンクなどと同等の台数に達している。

 ところが、10月は1891台に急落した。9月は中間決算期で売れ行きが伸びたから、10月に下がるのは当然で、2019年10月は台風19号によって甚大な被害を被っている。消費増税も実施され、マツダに限らずクルマの販売が混乱したから売れ行きも下がって当然だが、マツダ3の減り方は極端だ。10月の登録台数は、マツダ2(旧デミオ)とよりも少ない。

 マツダ3は11月も1588台と低迷して、12月は2793台に持ち直したが、今のところ順調とはいい難い。

 2019年のマツダ3の登録台数は、月別平均に換算すると約3500台だ。販売実績としては中堅だが、ライバル車のスバル「インプレッサ」と「XV」は、合計すると約3650台を登録した。マツダ3は2019年に発売された新型車だから、インプレッサとXVを下まわったのは不本意だろう。

■発売直前までスペックも出さない売り方が消費者をなえさせる

 日本国内の販売網にも触れておくと、マツダのディーラーは全国に約800店舗を展開している。トヨタ全店の4900店舗、ホンダの2200店舗、日産の2100店舗に比べると少ないが、スバルの460店舗よりは多い。マツダ3は、設計の新しさ、商品力、販売力を考えると、もう少し売れ行きを伸ばせるクルマだ。

 それなのに低迷する背景には、複数の理由がある。最も大きく影響したのは、マツダ3のイメージだろう。ボディパネルに風景が美しく映り込むなど、クルマ好きの気持ちを刺激するデザインだが、一般的にはマニアックで分かりにくい。販売の主力となるファストバック(5ドアハッチバック)の後ろ姿は、ボディ後部のピラー(柱)が太くて個性も強い。このピラー形状は、後方視界も悪化させている。

 価格は直列4気筒2Lガソリンエンジンを搭載する「20Sプロアクティブ」が、ファストバック、セダンともに251万5741円だ。各種の安全装備、運転支援機能、8.8インチセンターディスプレイ、8個のスピーカーなどを標準装着するから割高ではないが、額面だけを見ると高めに受け取られてしまう。

 今のマツダ車の特徴とされる1.8Lクリーンディーゼルターボの「XDプロアクティブ」は279万741円だから、購入予算は約300万円が必要だ。さらに火花点火制御圧縮着火方式のSKYACTIV-X搭載車は、「Xプロアクティブ」が319万8148円だから、2Lガソリンの20Sプロアクティブに比べて約68万円高い。SKYACTIV-Xは、2.3Lエンジンに匹敵する動力性能と、1.5L並みの低燃費を両立させた注目のエンジンだが、価格は極端に高い。

 発売の仕方も悪かった。マツダ3は4種類のエンジンを用意するが、2019年5月に発売したのは1.5Lガソリンとディーゼルだけだ。2Lガソリンは7月で、SKYACTIV-Xは使用燃料をレギュラーガソリンからプレミアムに変更した影響もあり12月にズレ込んだ。SKYACTIV-Xの燃費数値などが明らかになったのも11月だから、ユーザーはグレード選びに困惑した。

マツダ3のSKYACTIV-X搭載モデル発表直前の諸元表。ディーラーにも情報がないため、購入希望者も重要な判断材料となる出力や燃費性能がわからずじまいだった

 一般的にクルマを買う時は、車種を決めてグレードを選ぶ。そのためには全グレードの動力性能や燃費数値を把握する必要がある。しかしマツダ3では、1.5Lガソリンとディーゼルを5月に発売しながら、注目度の高いSKYACTIV-Xの数値は長らくわからなかった。これではグレードを選べず、SKYACTIV-Xのデータを待っている間に、購買意欲が衰えたユーザーも多かっただろう。

 表現を変えると、マツダ3はデータが出そろった今になって、ようやく普通に買えるクルマとなった。SKYACTIV-X搭載車の試乗車が販売店に配車されたのも最近だ。マツダ3の新鮮度は薄れたが、今後着実に売れる可能性もある。

■CX-30は及第点だが、見直すべきマツダの戦略の悪手

 一方、CX-30の2Lガソリンとディーゼルは、2019年9月に受注を開始して10月に納車を伴う発売となったが、SKYACTIV-X搭載車の動力性能と燃費はこの原稿を書いている2020年1月13日時点で明らかにされていない。販売店に問い合わせると「1月16日になればわかる。ただしCX-30のSKYACTIV-X搭載車の試乗車は11日に配車され、すでに試乗も始まっている」という。詳細なデータが未定の段階で、販売店に試乗車が届くのも珍しい。ユーザーが混乱することもあるだろう。

マツダ3とプラットフォームを共用し開発された「CX-30」。2019年1月16日にSKYACTIV-X搭載車の発売を開始した。 SKYACTIV-XとSKYACTIV-Gの価格差は約68万円で、マツダ3と同じになっている

 CX-30の売れ行きは、発売された2019年10月に2525台を登録しており、ライバル車のトヨタ「C-HR」と同等だ。ホンダ「ヴェゼル」よりは約300台少ない。前述のマツダ3よりは多い。11月は2690台、12月は3226台を登録して、ヴェゼルやC-HRと販売合戦を展開している。

 このように見ると、CX-30の販売は、好調とはいえないもののマツダ3よりは順調に推移している。

 そしてマツダ3とCX-30は、ボディタイプは異なるものの、エンジンやプラットフォームは共通だ。価格も近いので、互いにユーザーを奪い合っている面もあるだろう。そのためにマツダ3の登録台数は、前述の通り2019年7~9月は上向いたが、CX-30が発売されたあとの10~12月は低調だ。つまりマツダ3とCX-30は、発売時期も悪かった。

 マツダ3とCX-30の発売タイミングが重複した背景には、マツダが国内市場を軽く見ている影響もあるだろう。新型車が続けて発売されると、販売現場が対応に追われて多忙になり、顧客満足度を下げるのは当然の成り行きであるからだ。

 逆に一定の間隔を開けて発売すれば、商談も落ち着いて行われ、新車の発売に伴う相乗効果も期待できる。例えばマツダ3を目当てに来店した客がマツダ2を購入したり、CX-30に興味を持って訪れた客がCX-5を買うこともあるからだ。目当ての新型車が客のニーズに合わなかった時でも、セールスマンがほかのマツダ車を紹介して、売れ行きを伸ばせる。

 従ってマツダに限らず新型車は等間隔で発売したい。そうすればマツダ3とCX-30のような顧客の奪い合いも生じにくく、既存のマツダ車の販売を促進する効果も期待できる。

 この2車種の売れ行き評価は、マツダ3は低調で、CX-30は中堅水準だ。マツダの狙い通りでもあるだろう。マツダ3の趣味性を強めた外観、後席の狭いドライバー優先の居住性、SKYACTIV-Xの価格などは、いずれも万人向けではないからだ。マツダはマツダ3を大量に売ることは考えていない。

 CX-30はSUVとあって、マツダ3に比べると後席と荷室が少し広い。ヴェゼルやXVのような広々感はないが、ファミリーカーとして許容できる機能を備える。売れ行きもマツダ3より堅調だ。

■ブランド化を図るならば”空欄”は作るべからず

 2019年のマツダの国内販売総数は、OEM車などを含めて20万3580台であった。初代CX-5を発売する前の2010年は、マツダの国内販売総数は22万3747台だったから、魂動デザインとSKYACTIV技術による新世代商品群の売れ行きは旧世代のマツダに届いていない。

 そこもマツダは承知の上だろう。マツダは「メルセデスベンツが欲しい、BMWを買いたい」といわれるドイツ車のように、ブランドで選ばれるメーカーになりたいと考えている。そこで車名も、マツダ2、マツダ3、マツダ6に切り替えた。

「次のクルマはマツダにしようかな」。そう言われるためには、マツダならではの魅力的なクルマ造りを確立させ、長い時間を費やして浸透させねばならない。水平対向エンジンと独自の4WDを進化させてきたスバルでも、未だに「スバルが欲しい」と表現されるには至っていない。

 それでも今は多種多様のパワートレーンが求められる時代だから、マツダのような絞り込んだ商品戦略は新鮮だ。カッコよくて走りの楽しいクルマ造りを突き詰めて欲しい。そのためにも売り方は良心的にして、ユーザーが困らないように配慮する必要がある。諸元表に「未定」の空欄を作るのは、もうやめてもらいたい。

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