■CX-30は及第点だが、見直すべきマツダの戦略の悪手
一方、CX-30の2Lガソリンとディーゼルは、2019年9月に受注を開始して10月に納車を伴う発売となったが、SKYACTIV-X搭載車の動力性能と燃費はこの原稿を書いている2020年1月13日時点で明らかにされていない。販売店に問い合わせると「1月16日になればわかる。ただしCX-30のSKYACTIV-X搭載車の試乗車は11日に配車され、すでに試乗も始まっている」という。詳細なデータが未定の段階で、販売店に試乗車が届くのも珍しい。ユーザーが混乱することもあるだろう。
CX-30の売れ行きは、発売された2019年10月に2525台を登録しており、ライバル車のトヨタ「C-HR」と同等だ。ホンダ「ヴェゼル」よりは約300台少ない。前述のマツダ3よりは多い。11月は2690台、12月は3226台を登録して、ヴェゼルやC-HRと販売合戦を展開している。
このように見ると、CX-30の販売は、好調とはいえないもののマツダ3よりは順調に推移している。
そしてマツダ3とCX-30は、ボディタイプは異なるものの、エンジンやプラットフォームは共通だ。価格も近いので、互いにユーザーを奪い合っている面もあるだろう。そのためにマツダ3の登録台数は、前述の通り2019年7~9月は上向いたが、CX-30が発売されたあとの10~12月は低調だ。つまりマツダ3とCX-30は、発売時期も悪かった。
マツダ3とCX-30の発売タイミングが重複した背景には、マツダが国内市場を軽く見ている影響もあるだろう。新型車が続けて発売されると、販売現場が対応に追われて多忙になり、顧客満足度を下げるのは当然の成り行きであるからだ。
逆に一定の間隔を開けて発売すれば、商談も落ち着いて行われ、新車の発売に伴う相乗効果も期待できる。例えばマツダ3を目当てに来店した客がマツダ2を購入したり、CX-30に興味を持って訪れた客がCX-5を買うこともあるからだ。目当ての新型車が客のニーズに合わなかった時でも、セールスマンがほかのマツダ車を紹介して、売れ行きを伸ばせる。
従ってマツダに限らず新型車は等間隔で発売したい。そうすればマツダ3とCX-30のような顧客の奪い合いも生じにくく、既存のマツダ車の販売を促進する効果も期待できる。
この2車種の売れ行き評価は、マツダ3は低調で、CX-30は中堅水準だ。マツダの狙い通りでもあるだろう。マツダ3の趣味性を強めた外観、後席の狭いドライバー優先の居住性、SKYACTIV-Xの価格などは、いずれも万人向けではないからだ。マツダはマツダ3を大量に売ることは考えていない。
CX-30はSUVとあって、マツダ3に比べると後席と荷室が少し広い。ヴェゼルやXVのような広々感はないが、ファミリーカーとして許容できる機能を備える。売れ行きもマツダ3より堅調だ。
■ブランド化を図るならば”空欄”は作るべからず
2019年のマツダの国内販売総数は、OEM車などを含めて20万3580台であった。初代CX-5を発売する前の2010年は、マツダの国内販売総数は22万3747台だったから、魂動デザインとSKYACTIV技術による新世代商品群の売れ行きは旧世代のマツダに届いていない。
そこもマツダは承知の上だろう。マツダは「メルセデスベンツが欲しい、BMWを買いたい」といわれるドイツ車のように、ブランドで選ばれるメーカーになりたいと考えている。そこで車名も、マツダ2、マツダ3、マツダ6に切り替えた。
「次のクルマはマツダにしようかな」。そう言われるためには、マツダならではの魅力的なクルマ造りを確立させ、長い時間を費やして浸透させねばならない。水平対向エンジンと独自の4WDを進化させてきたスバルでも、未だに「スバルが欲しい」と表現されるには至っていない。
それでも今は多種多様のパワートレーンが求められる時代だから、マツダのような絞り込んだ商品戦略は新鮮だ。カッコよくて走りの楽しいクルマ造りを突き詰めて欲しい。そのためにも売り方は良心的にして、ユーザーが困らないように配慮する必要がある。諸元表に「未定」の空欄を作るのは、もうやめてもらいたい。
【画像ギャラリー】今回チャックした2モデルの内外装と、追加されたCX-30のSKYACTIV-X搭載車のスペックまで紹介
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