自分でできるレベルじゃないじゃん!!! フォルクスワーゲンID. Buzzのエアコンフィルターの交換作業が修行すぎる

自分でできるレベルじゃないじゃん!!! フォルクスワーゲンID. Buzzのエアコンフィルターの交換作業が修行すぎる

 クルマは購入してみないと分からないことが多い。故に購入前にオーナーレポートなどをチェックするひとは多い。そして現代は探しに行かなくてもSNSで簡単に情報が取得できるのだ。今回はSNSで話題になった、とあるクルマのメンテナンス事情についてお届けしてみたい。

文:古賀貴司(自動車王国) 写真:フォルクスワーゲン

販売前から注目を集めていたBEVミニバン

2017年にコンセプトカーとして発表されたID. Buzz。名車T1バスを彷彿とさせるデザインとBEVとの組み合わせに心ときめかせたクルマ好きは多いはずだ。
2017年にコンセプトカーとして発表されたID. Buzz。名車T1バスを彷彿とさせるデザインとBEVとの組み合わせに心ときめかせたクルマ好きは多いはずだ。

 愛犬と宿泊できるホテルは驚くほど高額だ。そこで個人的に目論んでいたのは、ビジネスホテルに宿泊費を支払い、駐車場で愛犬と車中泊しながら、シャワーとトイレだけホテルを利用するスタイルである。

 ミニバンサイズの車内空間があれば、窮屈さを感じることはないと踏んでいた。ハイブリッド車ではバッテリー状態によってエンジンが始動し、周囲に迷惑をかける可能性がある。

 しかしBEVなら完全に無音で、深夜早朝でも気兼ねなく車内で過ごせる。そういう意味で、フォルクスワーゲンID. Buzzは愛犬家にとって理想的な選択肢として大注目していた。

 パワートレインは最高出力286ps/最大トルク560N・mという強力な駆動用モーター&バッテリーという組み合わせで、WLTCモードの一充電走行距離も524~554kmとガソリン車ミニバン並みだ。

 ついに私が追い求めていた理想のクルマが日本に導入された、と喜んでいた。しかし、ちょっとゲンナリする話題をSNSで見つけてしまった。ID. Buzzのエアコンフィルターの交換作業が、TikTokやYouTubeで話題になっていたのだ。

個人でもやれるケースがあるフィルター交換なのに…

SNSなど様々な場所で作業工程が公開されているID. Buzzのエアコンフィルター。みなさんかなり苦労してらっしゃる様子で…。
SNSなど様々な場所で作業工程が公開されているID. Buzzのエアコンフィルター。みなさんかなり苦労してらっしゃる様子で…。

 通常であれば3分もあれば済むはずの簡単な作業が、なんと車両前面の大部分を分解する必要があるというではないか。

 まずボンネット(正式名称は”フロントサービスフラップ”)を開け、電気コネクターを取り外し、ウォッシャー液リザーバーを取り外し、各種ケーブルを取り外し、バルクヘッドに固定された2本のボルトの取り外しが必要だ。

 作業はここからさらに複雑になる。フロントドアを開けて、車両サイドのフロントフェンダー上部のトリムピースのネジを外す。

 その後、上部フロントトリムピースをスライドさせた後、持ち上げて車両から取り外し、別の電気コネクターを抜き、エアフィルターハウジングを覆うファブリックフラップを外す。

 ようやくエアフィルターを隠すパネルを取り外し、新品と交換できる状態になる。

 作業完了後は、取り外したすべてのトリムピース、電気コネクター、ウォッシャー液リザーバーを元通りに戻さなければならない。

エアコンフィルター交換にいくらまで払える?

フォルクスワーゲンらしく、華美すぎない車内デザインのID. Buzz。コンセプト、出来映えからして一定以上の評価がされると予想されているが…。
フォルクスワーゲンらしく、華美すぎない車内デザインのID. Buzz。コンセプト、出来映えからして一定以上の評価がされると予想されているが…。

 一般的な乗用車では、エアコンフィルターはグローブボックス奥か、ボンネット下の手の届きやすい場所に設置されている。

 ID. Buzzの複雑すぎるエアコンフィルター交換のプロセスは、ボルトの紛失、外装パネルへの傷、不適切なケーブルの再接続といった大きなミス発生の余地を残している。

 ID Buzzの独特な形状は理解できるが、キャビンエアフィルターの配置をこれほど複雑にする合理的な理由は見当たらない。

 それとも、エアコンはほかのフォルクスワーゲン車からの流用で、ID. Buzzのパッケージングに収めるためにはやむを得なかったのだろうか。

 一般的にキャビンエアフィルターは年1回程度の交換が推奨される消耗品だ。

 部品代は数千円程度だが、仮にディーラーが2時間分の工賃を請求したとすれば、ID. Buzzの場合、都度2万円を超える可能性がある。

 通常なら自分で交換できる部品に、これほどの費用をかけるのは不合理に思えてならない。

次ページは : クルマ購入にもSNSが必須になりつつある!?

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