いかりこそ敵と思え
したがって、他者の行為を完全に制御することは不可能。制御できないものに感情を浪費しても意味はない。むしろ、常に譲る側に回ることで、状況を支配することができる。相手の行為に反応するのではなく、自分が先に冷静な選択を行う。それこそが、安全運転における精神的な主導権を握る方法と言える。
怒りは伝播する。煽られたからといってやり返せば、双方の感情が増幅し、エスカレーションが始まる。この負の連鎖を断ち切るには、どちらかが「反応しない」という選択を取らねばならない。冷静なドライバーは、相手の挑発に反応せず、速度を落として距離を取る。挑発を受け流す行為は「負け」ではない。
むしろ、物理的・心理的距離の確保こそが安全を守る賢い防衛技術なのだ。さらに、イライラした状態でハンドルを握り続けること自体が危険だ。人間は怒りを感じると心拍数が上昇し、手足の動きが粗くなる。ブレーキペダルの踏力も一定にならず、車体の挙動を乱す。
そもそもイライラした状態での運転はすべきでない
もし強い怒りを覚えたら、一度安全な場所に停車し、窓を開けて外気を吸う。生理的なリセットを行うことで冷静さを取り戻すことができるだろう。レーシングドライバーの世界でも、ピットイン中に深呼吸し、心拍を整える時間を取ることがある。
感情をリセットすることは、速さだけでなく、安全にも直結する。
人によっては、もともと感情の起伏が大きく、些細なことにイラ立ちやすい性格もある。その場合、無理に自制しようとするよりも、「運転を控える」という選択を取ることも賢明だ。心理的に不安定な状態や、日常でストレスを抱えている時は、車の運転を避ける。短時間でも休息を取ることで、心のバランスは回復する。
運転は、心身が健全な状態でなければ行うべきではない行為である。また、「ドライブで気分転換をしたい」と考えて出かけることもあるが、強い感情を抱えたままハンドルを握ると、逆に危険を誘発する。感情の高ぶりはアクセル操作に反映されやすく、必要以上に速度を上げてしまうことに繋がる。
走りでストレスを解消しようとする発想そのものが、危険の入口であると心得るべきだ。
感情のコントロールもドライビングテクニック
怒りやイラ立ちを完全に消すことは不可能である。しかし、感情の発生を客観視し、その「ピーク」をやり過ごす術は習得できる。心理学的には、怒りは外的要因によってではなく、「自分の期待が裏切られた時」に生じると言われている。
すなわち、他者への期待値を低く設定すれば、怒りの発生頻度は減少する。ドライバー同士の関係も同様で、「相手は自分と同じ判断をしない」と前提づけておけば、行動の違いに過剰反応することがなくなる。
ドライバーにとって判断とは、ハンドル操作やブレーキ入力に直結する要素であり、つまりは走りそのものを左右する。冷静さを維持することは、技術の一部であるといっても過言ではない。感情を制御することが、安全の根幹となる。
このように、「イラッとした時の対処法」とは、単なる気分転換の話ではない。それは、運転という行為の根幹に関わる人間の制御技術の問題であり、どれほど高性能な車でも、感情に支配された操作を続ければ安全性は損なわれる。
逆に、どんなに交通環境が悪くても、冷静に判断し、他者を尊重できるドライバーは、常に一定の安全マージンを確保できている。怒りは瞬間的で、理性は持続的である。瞬間の感情に支配されれば、残りの人生を左右するほどの事故を招く可能性すらある。
ゆえに、理性を保ち、譲る余裕を持つことこそが、ドライバーとしての成熟の証となるのだ。イラッとした瞬間こそ、自身の成熟度が試されている。冷静であること。それが、あらゆる場面において最も速く、最も安全な走り方となることを心得ておいてほしい。
【画像ギャラリー】イライラしたら一回クルマを降りるのもアリ! 高速ならSAがあるから幸い楽しいリフレッシュ要素もたくさん!! つねに頭を冷静にして譲ることが成熟ドライバーの証!(11枚)画像ギャラリー













コメント
コメントの使い方素晴らしい記事だと思います。
しっかり心に刻んで運転したい。
脇道から無理やり飛び出してきて、その後ノロノロ加速もせず後続車にブレーキ踏ませて大渋滞させる車にイライラしないなら、ご立派です。
とても為になるお話でした。私も6秒マネジメントを実践していますが
それと共に、こういった専門家からの貴重な言葉を、読み飛ばさず自分に素直に反省させる心が、とても大切だと感じています。
車の性能がどんどん上がり、反面若かろうが視力等低下は自覚なく進んでる。そんな中で今まで通り交通安全を保つには、常に進化が必要ですからね