【都市封鎖その前に】ドライバーがすべきこと−緊迫のイタリアから

【都市封鎖その前に】ドライバーがすべきこと−緊迫のイタリアから

 新型コロナウイルスが依然世界で猛威を振るっている。日本でも2020年3月23日、小池東京都知事によって「ロックダウン」という言葉とともに、都市封鎖の可能性が示唆された。

 本稿では、イタリア在住23年の筆者が、今行われている国土封鎖とはどのようなものか、移動制限が暮らしやカーライフにどう影響を与えているかについて生活者視点で記す。そのうえで、ドライバーが何をすべきかについてふれたい。

文・写真:大矢アキオ イタリア文化コメンテーター
(文中データはすべて2020年3月28日現在)

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■往来する救急車と霊柩車

 まず経緯をおさらいしよう。

 感染状況が深刻なイタリアでは、ジュゼッペ・コンテ首相が「首相令(dpcm)」として、2020年3月10日から全土に外出制限が発動され、事実上の国土封鎖が行われている。

 この国の法制度において首相令は閣僚理事会だけで発令でき、既存の法律よりも優先される強力な制度である。

 先に3月8日にイタリア北部を対象に発令したものを拡大したかたちだ。12日には営業許可業種以外の商業施設の休止命令も同じく首相令として施行された。

 参考までにコンテ首相は、「Italia Zona Protetta(イタリア保護区域化)」という言葉を用いている。これはロックダウンという外来語よりも母国語で目的を明確にし、国民の理解を促していることは明らかだ。

 首相令の有効期限は4月3日であったが、さらに15日間延長される可能性が浮上してきた(3月29日現在)。背景には28日、死者の累計が1万人を超えたことがある。

 中部シエナ市の我が家の近所にも救急車が先週やってきて患者を搬送していった。そして今週は、まさに本稿を執筆中に再び別の家に救急車がやってきた。

 近くの道路ではマスクをした運転手が操る霊柩車が通過している、といったら状況が想像していただけるだろうか。

「不要外出」罰金は最高36万円

 次にイタリアで「外出制限」はどのように実施されているのかを解説する。

 極言すれば、外出はすべて禁止されている。例外は、食料品・医薬品・新聞雑誌・生活に必要な家庭用品、ペット用品の購入、燃料補給(自動車・家庭用)、通院、操業が許可されている業種従事者の通勤などである。

 イタリアの新聞雑誌販売店は切手・印紙のほか、公共料金の払込なども受け付けているので営業許可業種となっている。ただし写真のように衛生上入店禁止で、入口から購入したい品を告げるようにした店舗も。
イタリアの新聞雑誌販売店は切手・印紙のほか、公共料金の払込なども受け付けているので営業許可業種となっている。ただし写真のように衛生上入店禁止で、入口から購入したい品を告げるようにした店舗も。

 自動車は運転できるが、それら許可された移動の場合のみである。食料品購入も、自分の市町村から出ることは許されない。電車・バスの場合も同じで、駅や始発駅で検問が行われている。

 バスに関していえば、筆者が住む地域のバス会社は、運転士の安全を守るため前方ドアの乗降は禁止、運転士の直後2列は使用禁止にしている。

 散歩も家屋の近所のみ許されている。それも安全間隔(最低1メートル)を他者ととらなければならない。

 いずれの手段による移動の場合も、イタリア内務省がインターネットで配布している「自己申告書」に目的地を記入し、携帯する義務がある。正当な外出であるかをチェックしているのは、各種警察や陸軍である。

 イタリア陸軍のイヴェコ・リンチェ軍用車。平常時の2017年10月、フィレンツェ大聖堂前にて。
イタリア陸軍のイヴェコ・リンチェ軍用車。平常時の2017年10月、フィレンツェ大聖堂前にて。

 我が家周辺でも、国家警察・軍警察によるパトロールは、外出制限発動2週間目から強化されてきた。罰金額も引き上げられ、3月26日からは日本円換算で4.8万円〜36万円となった。

 自動車の押収も政府内で検討されたが、そちらは回避されている。参考までにイタリア国家警察によると、3月27日の1日だけで2783人が検挙されたという。

 そうした状況下、イタリア人の自動車生活も変化を余儀なくされている。すでにお察しのように、レジャーとしてのドライブは、正当な目的を伴わない移動であるため不可能である。

 自動車ディーラーは、営業許可の対象外。目下4月3日まで休業が義務付けられている。ただし、期間が延長されるのはもはや必至だ。
自動車ディーラーは、営業許可の対象外。目下4月3日まで休業が義務付けられている。ただし、期間が延長されるのはもはや必至だ。

 自動車販売店は営業許可業種ではないので、ショールームはすべて閉鎖されている。8代目「ゴルフ」のディーラー発表会を直前に控えていたフォルクスワーゲンをはじめ、各ブランドは、インターネットを通じた見積もりや購入相談で営業を継続している。

 国内調査機関が2020年GDPはマイナス6.5%になると予想し、家計の見通しがたたない中、車の買い替えマインドを抱くイタリア人は皆無といってよい。

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