【都市封鎖その前に】ドライバーがすべきこと−緊迫のイタリアから

「満タン」「整備」は今のうちに

 次に、新型コロナウイルス対策の外出制限が日本でも発動される場合を想定し、イタリアで今それを経験している筆者から、日本の自動車ユーザーへのアドバイスを。

1.運転しない

 こちらでは一部自動車メーカーでさえ、車を運転しないようメディアを通じて呼びかけ始めている。イタリア北部ミラノとベルガモでは、メッセ会場を仮設病院にする工事を開始している。もはや病院だけでは病床が足りないのである。

 イタリア政府がひたすら繰り返すように、一人ひとりが外出せず可能なかぎり自宅にとどまり、感染の機会を減らすことが大切だ。

 日本で自動車ファンが日頃さまざまなイベントを楽しんでいる幕張メッセや東京ビッグサイトが巨大な仮設病院や遺体安置所として使われる姿など、誰も想像したくないではないか。

2.燃料を満タンに

 といっても「どこかに逃げる」ためではない。前述のように検問が厳しく実施されているなか、それは事実上不可能だ。

 いっぽうで食料品などの買い出しに自動車が必要な人は多い。またイタリアでは救急車がなかなかやって来ないとき、怪我や病気の家族を乗せて医療機関に行く場合も生じる。(注:新型コロナ感染の疑いのある場合は必ず自宅に留まり、電話で連絡する。)

 イタリアでは、さいわいガソリンスタンドはライフラインとして営業許可業種に加えられている。ただし従業員の安全を考え、給油所によってはセルフ式のみに切り替えている。この措置は日本でも行われることが考えられる。

 普段は昼夜を問わず賑わっていたコイン洗車場も、休業が義務付けられたため人影が消えた。
普段は昼夜を問わず賑わっていたコイン洗車場も、休業が義務付けられたため人影が消えた。

 また、外出エリアが制限された場合、遠方にある行きつけのスタンドまで行けなくなる。したがって、平常時のうちに、慣れたスタンドで燃料は満タンにしておくべきだ。

 原油価格値下がりの恩恵で、リッターあたり価格も安い。筆者の場合さいわいスーパーが近いこともあり、首相令発動から今日まで3週間燃料補給をしていない。

3.基本的な整備

 主要ブランドの整備部門は、緊急を要する修理のみ、予約制で受け付けている。サービス工場への移動も当然のことながら、前述の自己申請書が必要だ。また、あくまでも救急車や霊柩車などの整備が優先なのが現状である。

 したがって、一般ユーザーへの対応が遅くなることは充分予想される。そうしたことから自分で可能な基本的点検は、平常時のうちに行っておくべきだ。

「あれ」のお手入れも忘れずに

 ただし、日本ですでに車検、自賠責保険、運転免許の有効期限が伸長されたように、イタリアでも自動車ユーザーを救済するため、各種の臨時行政措置が講じられ始めた。

 ついでにいうとイタリアでは、交通違反の反則金に関しても、ユニークな措置が講じられている。

 実はこの国では「自宅に通知が届いてから5日以内に支払いを済ませると、反則金の額が3割引になる」という、日本からすると摩訶不思議な法規が2016年に施行されている。未払い率を少しでも減らすのが意図だった。

 この割引期限についても、「5日以内」ではなく「2020年5月31日まで」となった。指定出納窓口である各地の郵便局が混雑して、感染の温床となるのを避けるのが目的だ。

 最後に、車には関係ないが、もうひとつ大切なことを。

 イタリアの外出制限下では理髪店・美容院とも営業が許可されていない。そうしたなか早くも「うまく自分で髪を切るには」のハウツーがネット上に出現している。

 読者諸兄も、できるうちに髪の毛の手入れもしておくことだ。筆者などは、昨今流行のヒッピー風長髪になって周囲を驚かせるのも一興と腹をくくっている。

 だがその前に、一日も早くこの第二次大戦後最大の試練がこの美しい半島から過ぎ去ることを願っている。

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