■デザイン優先でいいのか?
鈴木 僕はデミオ、CX-3を続けて買って満足していましたが、どちらも年数が経ってきました。コンパクトクラスの商品力アップが必要ではないですか?
藤原 利幅がそれほど大きくないので、モデルライフをどう考えるかですね。マツダ2もCX-3もどんどん改良していこうと思ってます。
鈴木 そうは言ってもコンパクトクラスはモデルチェンジを繰り返して市場を刺激する必要があります。マツダは今、そういう従来型のビジネスと距離を置こうとしてますよね。
藤原 頻繁にモデルチェンジするのはマツダの規模としては難しい。マツダ2とCX-3はデザインもインテリアもいいので、改良を加えていけばまだまだ戦える商品力はあると思っています。
鈴木 藤原さんは2代目デミオの開発責任者でしたよね。
藤原 はい。この間まで革シートのスーパーコージーに乗ってました。
鈴木 ああいうクルマが最近のマツダにないんですよね。デザインがカッチリしていて格好つけすぎ。真ん中から下のゾーンはもうちょっとユルいほうがいいんじゃないかな。
藤原 そこは考え方でしょう。統一した戦略を継続しきれなかったのが日本企業だと思っています。我々は徹底的に継続して「日本企業のなかにもこんな会社がある」という存在になりたいんです。
鈴木 僕は藤原さんとは異なる意見を持っていて、デザインに正解はないけど、技術はいつか正解が見つけられる。技術を積み重ねていくと向上していけるけど、デザインは正解がないうえに時間が経つと風化します。デザインでブランドを高めていくのは凄くリスキーだと思うんですよ。
藤原 リスキーでもやらなくちゃいけない。短期的な浮き沈みに惑わされず、そこは守り通したいと思っています。マツダの世界シェアは2%です。販売台数至上主義だった時代もありましたが、あれは間違いで、2%でいいと。徐々に認めてくれるお客様も増えていると思うし、我々がやっていることは絶対に間違ってないと思っています。
鈴木 茨の道でも歯を食いしばってやっていくと。
藤原 BMWもアウディも1980年代前半くらいから歯を食いしばってやってきたんです。我々も20年、30年と続けないといけないんですよ。
■なぜマツダには室内の広い小型車がないのか?
編集部 マツダはなぜ室内が広いコンパクトカーを作らないんですか?
藤原 室内の広いクルマと同じ領域で競合しないようにしているんです。そこは私がやっていた2代目デミオまでで、3代目でそこを狙うのはやめると決めたんです。CX-3はファミリー層には弱いかもしれませんが、CX-30を作ってカバーしています。他社のクルマと1対1で勝負するのではなく、群で勝負しないといけないと思っています。
編集部 総力戦ですね。
藤原 私が担当した2代目デミオで失敗だったのは、お客様を見過ぎたことなんです。当時、同時並行で進んでいたのが初代アテンザで、金井誠太さん(元会長)がやったクルマ。
私の最初のプレゼンは「お客様の声はこうでした。だからこうしました」でしたが、金井さんのプレゼンは最初にバーンと「志」と掲げて「こんなクルマを作りたいんだ」とやった。
それにショックを受けました。あれ以来、志を持って提案したものでないとお客様の心に伝わらないという思いがずっとあるんです。だから我々はお客様のデータは見るけど、それでクルマは作らない。
他社は見るけど、それで目標は作らない。自分たちの「やりたい思い」を哲学にしてクルマを作る。それがあの時私が学んだことで、そこから変えていません。
2代目デミオのようなクルマを作れという気持ちはわかりますが、私の今の「志」のなかにそれはないんです(笑)。
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