マツダはどこへ向かうのか「我々はシェア2%でいい」マツダ副社長ロングインタビュー

■人は育っているのか?

編集部 藤原さんの話を聞いていると、ブレずに長い間信念を貫き通してますが、それって疲れませんか? それとマツダはその目標に向かって全社一丸になれてますか?

藤原 私の年代は特にそうだと思うんですけど、マツダ100年の歴史の後半は右往左往し続けてきたんですよ。そのあとのリカバリーに凄く時間がかかってる。その怖さを知っているので曲げないという思いが強いんです。

いろんな意見を聞いたり指摘されて不安になることもありますが、「これが人間にとって一番正しいクルマの作り方だ」ということさえ決めておけば迷わないし、疲れないんです。

鈴木 藤原さんの下で働いている人たちは?

藤原 何かあった時には原点に戻ろうという話をしていて、「人間のためにいいクルマを作る」と決めたんだから守ろうと。人間って10年や20年で変わるのか? クルマの運転をする時の動きや筋肉の使い方は変わらないよねとずっと言い続けているので、迷いかけても最終的にはそこに戻るようにしています。

鈴木 今、人は育ってますか?

藤原 育ってますよ。エンジニアもデザイナーも上を突ついてくる中堅が現われてます。その時代、その時代に中心になる人は絶対に出てきます。

鈴木 それを聞いて安心しました。夢を繋いでいくのは人間ですからね。

*   *   *

■インタビューを終えて──。「ブレない姿勢」の期待と不安

 マツダが生き残るためには、世界シェア2%でいいからマツダ車を積極的に選んでくれるユーザーが必須。何年も前から藤原さんはそう仰っている。この意見に反対する人はたぶんいない。

 しかし、ではどうすればマツダは2%の熱烈な支持者を獲得することができるのかという方法論については、時として意見が分かれる。

 近年のマツダは、魂動デザインとSKYACTIVを両輪として成果を収めてきた。とりわけ、リーマンショック後のどん底(2011年まで4年連続の赤字)から立ち直り、2013年から3年連続で最高益を更新したV字回復はおみごと。

 これを牽引したのはSKYACTIV第一世代だったが、狙いどおり「マツダ車を積極的に選んでくれるユーザー」が大いに増えた時期だった(私事ながら、ぼくもこの時代にデミオ、CX-3とマツダ車を連続で購入した)。

 問題は、そのSKYACTIV商品群が一巡して第2世代に入った2016年以降だ。為替差損などが響いて利益が半減。2019年度に至っては利益はピークの7割減、販売台数も減少に転じている。

 逆風下ではさまざまな異論が吹き出してくる。魂動デザインはワンパターンだとか、SKYACTIV技術に執着するあまり電動化が遅れているとか、ひとたび風向きが変わると外野の声は容赦ない。

 今回のインタビューでもそういった話題は出たのだが、藤原さんの信念はまったく揺らぐ気配がない。

「ここで短絡的に安売りに走れば、せっかく築いてきたマツダのブランドが毀損する。いったん失った信頼を回復するには、10年20年という長い時間がかかる」

「正しくCO2を減らしてゆくには内燃機関の改良が不可欠。EV化を前倒しする予定はありません」

 ぼくの個人的な意見は、長期的には藤原さんの戦略に賭けてみたいけれど、短期的には対症療法も必要では? というもの。われながらブレまくりではあるけれど、今は泥臭い商売も必要な時と思うからだ。

 今回インタビューさせていただいた所感としてこのへんの溝はたぶん埋まらないと思うが、今後も藤原さんの舵取りには注目していきたいと思った次第でした。

90分ノンストップで話し続けた鈴木直也氏(左)と藤原清志副社長。マツダの目指す道がよくわかるインタビューとなった。これからに期待だ!

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