■リアサスはトーションビームでいいのか?
鈴木 マツダ3はリアサスがマルチリンクからトーションビームになりました。僕はスペックもひとつのブランドだと思っていて、乗り比べると目立って劣っているわけではないけど、Cセグのリアサスはマルチリンクやウィッシュボーン系であってほしい。
藤原 これは議論しました。我々がやってきたE型マルチリンクを捨てるわけですよね。でも、プジョーに乗ってみろよと。プジョーはトーションビームだけど凄くいい。形式じゃないよねと。Gベクタリングコントロール(ハンドル操作に応じて駆動トルクを変化させ、スムーズな挙動を生み出すシステム)もあるのでイケると思って決断したんです。でもラージクラス、特にFRでトーションビームはありえないので、そこは別のサスペンションにしますけどね。
鈴木 今、初めて藤原さんの説明に納得しかねるものがあって、例えばベンツAクラスやVWゴルフなどは下のグレードはトーションビームでも上のグレードには別のサスペンションを用意したりします。BMWはFF化した1シリーズでリアのマルチリンクは残した。そういうところでマツダ車が引けを取ってもらいたくない。
藤原 気持ちはわかります。ただ、相当議論して決めたことなんです。
編集部 SKYACTIV-Xが一般ユーザーに浸透している手応えはありますか?
藤原 欧州ではマツダ3、CX-30の40%くらいがXだし、テクノロジー賞などもいただいています。ただ、日本は凄くインパクトがあるものでないと、すぐには食いついてもらえません。
鈴木 テクノロジーは洗練されるほどインパクトが弱くなるジレンマがありますね。
藤原 2012年に出したSKYACTIV-D(クリーンディーゼル)は凄いインパクトがありました。420Nm(42.8kgm)以上のトルクがあって、リッター14~15km走る。そういうのがあると早く立ち上がるんですが、洗練されてくると難しい。徐々に上がるだろうと思って諦めずにやっていきます。
鈴木 僕らはつい、だったらカンフル剤を打ちましょうよと言いたくなるわけですよ。基本的にコンプレッサーを回しているエンジンだから、もう少しパワー、トルクを高めたバージョンが作れないわけではない。もう1~2割パワーのある仕様があったらインパクトが出るのに、もったいないと思っちゃうんです。
藤原 ポテンシャルはあるんですが、最初の技術だけにコンサバティブに押さえ込んでいるんです。これから徐々にやっていきます。私自身も楽しみにしていますよ。
鈴木 値付けはどうですか?
藤原 Xにはマイルドハイブリッドが付いてるし、グリルシャッターもあるし、バイワイヤのブレーキも付いてるし、価格は高くないと思っているんですけどね。
鈴木 Xがほかのグレードと見分けがつかないのはどうなんでしょう? Xだけグリルに赤い線を入れるとかしたほうがいいんじゃないですか。
藤原 ですよね。デミオでディーゼルだけ赤い線を入れたでしょう? あれがあまり評判よくなかったんです。その経験があるものだから(笑)。
鈴木 マツダはあえて地味な方向へ行こうとしていてわかりづらい面がありますよね。そこは改めたほうがいい。
藤原 はい、改めます。バッジくらい替えたほうがいいですよね。
■電動化をどうする?
鈴木 欧州で急激に若い人たちのマインドが環境志向に振れて、クルマにも大きな影響を与えています。マツダも電動化シフトを前倒しにしないと欧州市場でブランド価値を毀損する恐れはないですか?
藤原 皆さんたぶん幻想を見ているだけだと思います。
鈴木 世論は一度極端から極端に走って揺れ戻すじゃないですか。
藤原 それについて行けるのは大企業だけです。我々はそれに付き合っているともたない。揺れ戻すところで待っているんです(笑)。でも、EVのMX-30を出します。
鈴木 慌てず、プログラムどおり電動化ブロックを積み上げていくと。
藤原 SKYACTIV-Xとマイルドハイブリッドの組み合わせとMX-30で行こうと。唯一の誤算はディーゼルの比率がもっと上がる予定だったのが、欧州勢の不正問題で落ちたので、そこは痛い。でも、片道1000km走る人がたくさん居るドイツでは、やっぱりディーゼルですよ。
鈴木 それが電動に置き代わるとは到底思えないですよね。で、EVは「EV2.0」で行くと。
藤原 「EV2.0」はいい言葉ですよね。社内でも言い始めているんです。
鈴木 EVの電池にはジャストサイズがあって、その航続距離が足りないならレンジエクステンダーとかPHEVを考えればいいし、逆に考えないならBEVで短距離シティユースのセカンドカーとして売るべきなんですよ。
藤原 もしくは超高級なプレミアムカーにする。中間が凄く難しいんです。大量の電池を積まないMX-30は「EV2.0」の考え方。そこはじっくり考えて作ってきたところです。
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