トヨタ全店全車種扱いが今後の販売にも影響
これからの注目される展開としては、2020年5月になると、トヨタの全店が全車を扱う体制に移行する。
トヨタ店やトヨペット店といった4つの販売系列は、基本的には存続するが、ひとつの資本が4系列すべてを経営している場合は、東京地区のように全店を1系列に統合することもあり得る。
かつては日産やホンダも、販売店を系列化していた。それを撤廃して全店が全車を扱うようになると、国内市場に合った販売しやすい車種はさらに登録台数を伸ばし、売りにくい車種は高価格車を中心に下がっていった。
扱える車種に制限がなくなると、顧客は人気車を求め、販売店もそこに注力するから台数格差が拡大するのだ。
その結果、今のホンダでは、N-BOXが国内で新車として売られるホンダ車の28%を占める。軽自動車全体なら50%だ。
日産もデイズ+ルークス+ノート+セレナの販売台数を合計すると、国内で売られる日産車の67%に達する。今のホンダと日産では、販売格差の拡大により、セダンは売れ行きを大幅に下げた。
ヤリスとフィットは「与えられた使命」が違う?
トヨタのヤリスも、今はネッツトヨタ店だけが扱うが(全店に約1600店舗)、2020年5月に全店(4900店舗)で販売するようになると、売れ行きを伸ばす。ヤリスのようなコンパクトカーは、国内市場で高い人気があるからだ。
その代わり、セダンは時間の経過に伴って売れ行きを下げていく。プレミオ&アリオンは、すでに設計が古く廃止される可能性が高い。クラウンやカムリの先行きも分からない。
ヤリスが全店で売られるとコンパクトカーやハッチバック同士の競争も激しくなり、アクア、パッソ、カローラスポーツは影響を受けて売れ行きが下がる可能性がある。
以上のように、全店が全車を扱うようになってヤリスが売れ行きを伸ばすと、ほかの車種のテコ入れも相応に行わなければ販売格差が拡大する。
改良を受けずに放置される車種が増えたり、車種数の削減に繋がる心配もある。これらはすべてユーザーの不利益に結び付く。
日産はすでにこの状態に陥り、ノートが国内販売の1位を争う一方で、メーカー別の国内販売順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位で落ち着いた。国内で発売される新型車も、1年から2年に1車種と少ない。
ホンダもN-BOXと軽自動車の比率が過剰に高まった。バランスを取って登録車の商品開発を活性化するためにも、新型フィットが重要になる。
つまり、ヤリスは過剰に売れないよう注意する必要があり、フィットはホンダの軽自動車偏重を抑えるために販売を促進せねばならない。与えられた使命が異なる。人気車が登場するのは良いことだが、ほかの車種や市場全体に与える影響はさまざまだ。
コメント
コメントの使い方