グレイス、ジェイドも同時期に廃止
この売れ行きでは、シビックセダンの廃止も理解できるが、2020年1月にマイナーチェンジを受けた直後だ。コストを費やして改良を行い、その約半年後に廃止するのも唐突に思える。
シビックセダンの廃止は、ホンダの事業方針に基づく。ホンダの八郷隆弘社長は、2019年5月の会見で、商品ラインナップの見直しと共有化を進めると述べた。
この方針に基づき、2025年までにグローバルモデルは派生車の数を現在の3分の1に減らし、地域専用モデルは販売力の強い車種に集約して効率を高める。
従って廃止が決まったのはシビックセダンだけではない。
3列シート仕様も用意するミドルサイズハッチバックの「ジェイド」、数少ない5ナンバーセダンの「グレイス」も終了する。
ホンダによると「シビックセダンのお客様は、ハッチバックでも満足して頂けるだろう。もともとシビックはハッチバックのイメージだった。同様にジェイドはフリード、グレイスはフィットで補える」としている。
その一方で、国内販売台数が少ないのに、取り扱いを続ける車種もある。
例えばアコードは、2019年における先代型の販売台数は1056台だった。このアコードが国内販売を継続して行い、シビックセダンは約1800台、ジェイドは約3100台、グレイスは約6300台を販売しながら廃止される。
つまりアコードは、売れ行きは低調でも、国内市場にとって大切な車種と判断された。
選択と集中で求められる「売れ筋以外のホンダ車」の工夫
今後は海外市場を含めてクルマの世界生産台数は頭打ち傾向を強める。しかも電気自動車を含めて環境性能を向上させ、優れた安全メカニズムや自動運転の開発も進めなければならない。
選択と集中が求められ、重複が生じる車種は廃止して、基本的に1カテゴリーに1車種という体制を築く。この考え方を徹底させると、シャトルもフィットとフリードでカバーできるだろう。
以上のように車種の選択肢を整えたら、次に行うべきは、冒頭で述べた売れ筋6車種以外のメリットを分かりやすく訴求することだ。
シビックハッチック、アコード、インサイトといった背の低い車種は、重心も下がるから安心(走行安定性)と快適(乗り心地)が優れている。
今の若いユーザーは、昔と違って運転の楽しさは不要でも、衝突被害軽減ブレーキといった安全装備に向けた関心は高い。
この世界観を上手にアピールできれば、シビックセダン、ジェイド、グレイスの廃止が車種構成の分かりやすさに繋がり、シビックハッチバックやアコードの販売に効果をもたらすことも考えられる。
ただし、これらの3ナンバー車は、もともと日本向けではなく(アコードは北米や中国では日本の200倍以上売れている)価格も高いから、N-BOXやフィットに比べると繁殖力が弱い。
ヴェゼルやステップワゴンを使っているユーザーが、シビックハッチバックやアコードに乗り替えられるようなストーリーと仕立てを考える必要もあるだろう。
漠然と売るだけでは、シビックハッチバックやアコードも、アコードセダンやグレイスと同じ道を辿ることになりかねない。
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