停電したらEVは充電できない――そんな弱点を覆す仕組みが福島県で始動した。太陽光発電と32kWhの蓄電池、EV充電設備を組み合わせ、電力会社の系統電力に頼らずEVを充電できる「完全オフグリッド型EV充電ソーラーカーポート」が導入された。
文:ベストカーWeb編集部/画像:PRTimes
災害時にもEVを「動かせる」! 太陽光×蓄電池の新発想
EVの普及が進む一方で、災害などによる長時間停電が発生した場合、「そもそもどこで充電するのか」という課題は残されている。
そんななか注目したいのが、AiNERGY、GCエナジー、REPOストレージの3社が構築した「完全オフグリッド型EV充電ソーラーカーポートシステム」だ。
第1号設備は、2026年9月14日に福島県大沼郡会津美里町のAiNERGY本社事務所へ導入された。このシステムのポイントは、電力会社の系統電力への接続を前提としていないことだ。
設備は、太陽光パネルを搭載したソーラーカーポート、完全オフグリッド自立運転に対応するパワーコンディショナ、16kWhの蓄電池2台による合計32kWhの蓄電容量、EV充電設備、各機器を連携させる制御システムなどで構成される。
日中はソーラーカーポートで発電した電力をEVの充電に利用。余った電力は蓄電池へ蓄える。そして太陽光が発電していない時間帯や発電量が不足する場合には、蓄電池からEVへ電力を供給する仕組みだ。
つまり「発電する→蓄える→EVを充電する」という流れを、ひとつの独立したシステムとして成立させている。ここが、一般的な系統電力を利用するEV充電設備との大きな違いである。
EVの弱点を「移動のためのエネルギー」で補う
今回の取り組みが興味深いのは、単に「停電時でも電気が使える」という話にとどまらない点だ。
大規模災害では、停電と同時に道路や物流網が寸断され、ガソリンなどの燃料供給が滞る可能性がある。そうなると、救援活動や物資輸送、医療・福祉サービスなどに必要な車両を動かすことそのものが課題になる。
EVの場合も、系統電力からの充電に依存していれば、長時間の停電によって充電手段を失う可能性がある。 そこで太陽光発電と蓄電池を組み合わせる。外部からの電力供給が途絶えても、太陽光から電気をつくり、蓄えて、EVへ供給するという考え方だ。
「非常用電源」ではなく、「移動のためのエネルギー」を確保する。この発想は、EVを災害時の移動手段として活用するうえで重要なポイントになりそうだ。
もちろん、実際に災害時にどの程度のEVをどれだけ充電できるかは、太陽光の発電量、天候、蓄電池の残量、EV側の充電条件などによって変わる。今回の第1号設備では、実際の発電量や蓄電池の充放電状況、EVへの充電量などを検証していくという。
この運用データが今後どのようなモデルにつながるのかにも注目したい。
完全オフグリッドで動作するという特徴は、災害時だけでなく、通常の電力インフラを利用しにくい場所でも生きてくる。3社によれば、電力系統が整備されていない山間部や遠隔地、無電化地域、臨時施設などへの単独設置も可能としている。
さらにソーラーカーポートは、駐車スペースの上部を発電設備として活用できる。既存の駐車場を維持しながら、発電・蓄電・EV充電の機能を追加できるわけだ。
平常時には再生可能エネルギーをEV充電に活用し、災害時には独立した電源として機能させる。普段から使える設備を、そのまま防災インフラとしても活用する考え方である。
今回の導入場所が福島県という点にも意味がある。AiNERGYは2012年、前身の会津太陽光発電として福島県会津若松市に設立され、現在は会津美里町を拠点に再生可能エネルギー事業を展開している。
同社は東日本大震災と原発事故を経験した福島から、災害時にも「動ける」状態をつくる地域エネルギーモデルとして、このシステムの意義を発信していくとしている。
今回のプロジェクトでは、AiNERGYが導入・運用検証と地域実装、GCエナジーがソーラーカーポートを含むシステム全体の設計・施工、REPOストレージが完全オフグリッドで稼働するパワーコンディショナと蓄電システムを担当。
異なる専門性を持つ3社が組むことで、太陽光、蓄電池、EV充電を一体化した設備が実現した。今後は自治体、企業、医療・福祉施設、物流施設、工場、防災拠点などへの導入提案を進めるという。
EVは「走るための電気」をどこから確保するかまで考えて、初めて社会インフラとしての価値が見えてくる。今回のソーラーカーポートは、駐車場を単なるクルマを置く場所から「電気をつくり、蓄え、クルマを動かす場所」へ変える取り組みといえる。
EVの普及と防災、そして再生可能エネルギー。これらをひとつにつなぐ仕組みとして、今後の実証データと導入拡大に注目したい。


コメント
コメントの使い方