■なぜクルマの保険は2本立て? 任意保険を義務化しない理由
ところで、クルマの保険は何で自賠責と自動車保険の2本立てとなっているのか、不思議に思う人もいることだろう。自賠責だけでカバーする範囲を広げれば、未加入の問題は解決するのでは、と思うのも当然だ。
それには自賠責保険の成り立ちが関係している。自賠責保険は「自賠法」という法律によって定められており、これは昭和30年に最初に制定されている。つまり自家用車というものが普及し初めて交通事故が問題視されるようになって作られたもので、まずは事故の被害者を救済するべしと考えられて定められた制度なのだ。
そのため何度も見直しされて保険金の上限などは引き上げられているが、基本的には対人賠償のみで、現時点でも限度額は3000万円となっている。だが交通事故で相手を死亡させてしまった場合、高額な賠償金を支払うケースも珍しくない。ちなみにこれまでの最高額は5億2853万円で、41歳の眼科開業医をされていた方が死亡してしまったものだ。
自動車保険は、自賠責ではカバーできない領域を補うためのもので、あとから損害保険会社が商品として用意するようになったもの。そのため自賠責のカバー範囲を大幅に広げるには大きな法改正が必要になる。それに賠償額を無制限としたり、自動車保険のようにさまざまな特約を付けるのは、実際の自賠責保険の運用にも大きな問題となる。
また、組合員が出資して助け合う共済と異なり、あくまでも自動車保険は保険商品なので、自賠責がそれを吸収してしまうのは民業圧迫ということにもなる。自動車保険を扱う損害保険会社の屋台骨を揺るがしかねない。
しかし、罰則などは設けるのは難しいとしても自動車保険、もしくは自動車共済は加入を義務化したほうがいいと思う。何故なら、クルマを運転しているだけでドライバーには責任が生じて、相手が悪くても過失割合が0対100になるようなケースはほとんどないからだ。
保険はあくまでも損害を補償するだけで、直接安全性を高めるような商品ではない。安心のために保険に加入しても、常に周囲の交通に注意しながら運転することも忘れないで欲しい。
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