日産フーガ&シーマ 生き残りへの道 このまま見殺しか…ラインナップ大幅削減!

 日産がオンラインで行った、2019年度決算・事業構造改革計画発表記者会見。そのなかでグローバルでモデル数を69から55へ削減し、モデルライフを4年以下に若返らせるという重大発表が行われた。

 業績悪化に苦しむ日産だが、現在モデルライフが11年で、販売台数も低迷してる「フーガ」は真っ先に整理対象になるのではないだろうか? という疑問が頭をよぎる。

スカイラインと比較しても、フーガ&シーマの苦戦具合がわかる

 4ドアセダン不調が続く日本で、そのほかの4ドアセダンはどうなるのか? フーガは消滅してしまうのか? 自動車評論家の御堀直嗣氏が分析する。

文/御堀直嗣
写真/NISSAN、編集部

【画像ギャラリー】生き残りのために変化が必要! 日本で苦戦中の日産4ドアセダンたち


■ラインナップを削減 持ち直したスカイラインは継続か

 2020年5月末に日産が開いた2019年度決算報告と、事業構造改革計画によれば、4年後の2023年度までに、現在65ある車種を20%削減して55車種以下に減らすと、内田誠社長は示した。これは、大幅な赤字からの再生を目指す新たな中期計画による。

 どのような車種が削減されるのか、具体的な車種名はまだ公表されていないが、残される車種の方向性は明らかにされ、グローバル(世界的)に魅力と競争力を発揮できる車種を中心に資源を集中する。また、車歴を4年以下にすることも示された。

 もう少し具体的には、資源を集中する車種群として、Cセグメント、Dセグメント、電気自動車(EV)、スポーツの4つであるとしている。Cセグメントとは、「シルフィ」「キャシュカイ(日本で2014年まで販売されたときはデュアリス)」「エクストレイル」などを指す。

 Dセグメントは、「アルティマ(日本ではティアナ)」「ムラーノ」「パスファインダー」などだ。「スカイライン」は、4ドアセダンとしてはDセグメントだが、日産はスポーツの集団に組み入れている。つまり、スカイラインは、車種削減から外れるのではないかと思われる。

 というのも、昨今の4ドアセダン人気の低下により、国内でのスカイラインの販売は一般社団法人 日本自動車販売協会連合会の乗用車ブランド通称名別順位のベスト50位に車名が並ばないほど低迷していたが、2019年のマイナーチェンジにより、インフィニティと別の国内向け日産の顔つきが採用され、バッジもインフィニティから日産に戻り、さらにプロパイロット2.0や、400Rの車種追加によって、2019年9月に48位に入ったのである。

マイナーチェンジの効果で落ち込んでいた販売が多少持ち直したスカイライン。400Rは人気が高く、その販売比率も高くなっている
2019年9月のマイナーチェンジで追加された400Rは、3L、V6ツインターボを搭載し、405ps/48.4kgmというスカイライン史上最高スペックを誇る

 それは瞬間風速的であったかもしれないが、スカイラインらしさや、技術の日産を印象付ける商品性を発揮すれば、プリンス時代から63年の歴史を積み上げてきたスカイラインは、日本の4ドアセダンの代表としてまだ消費者の心を揺さぶる魅力を維持しているといえる。

 またスカイラインは、海外ではインフィニティの車種として販売されているが、そのなかでもっとも台数を確保しているクルマでもある。

■厳しい立ち位置に立たされたフーガ&シーマ

 一方、「セドリック/グロリア」から車名を変更した「フーガ」は、国内はもとよりインフィニティとしてもスカイラインから差をつけられ、シーマと合わせても1/5近くでしかない。国内外を通じて、上級の後輪駆動の4ドアセダンで日産は、地位を失いつつあるといえるだろう。その理由は明確ではない。しかし、世界的な販売拡大路線によって、上質な上級車種や高級車を選ぶ顧客から敬遠されたといえなくもない。

2004年にセドリック/グロリアの後継車として登場した「フーガ」(写真は初代)は、2009年に2代目(現行型)にフルモデルチェンジ。それから11年間フルチェンジされておらず、次期型開発のニュースは入ってきていない
現行型フーガ。2015年のマイナーチェンジで、スカイラインと同じくインフィニティエンブレムを装着したが、2019年12月の仕様向上で再び日産エンブレムに戻している
2012年5月に「フーガハイブリッド」をベースとしたハイブリッド専用車として復活した「シーマ」。かつてバブル期に巻き起こした「シーマ現象」を再び起こすことはできなかった

 実際、2019年の日産の世界販売は480万台弱であり、2023年へ向けた販売台数の計画は生産能力で540万台にするとのことだ。

 一方、プレミアムブランドとして知られるメルセデス・ベンツやBMWは、年間の世界販売台数が200数十万台水準であり、国内でも人気を高めているスウェーデンのボルボは、70万台規模だ。

 もちろん、それらのメーカーにも、メルセデス・ベンツ「Aクラス」、BMW「1シリーズ」、ボルボ「V40」や「XC40」など、小型車が含まれるが、クルマの大小ではなく、品質の高さを維持し、消費者へもそこを商品性の一部として評価される背景には、世界販売台数などそれなりの数の規模感覚があると考えられる。たとえばレクサスも、トヨタから切り離してみれば70万台規模のブランドだ。

 日産も、インフィニティでは「Q30」と名付けた小型ハッチバック車があるが、メルセデス・ベンツ「Aクラス」を基にしているというそのクルマの販売台数は、2019年に約2700台に止まる。全体的には、日産の小型車といえば大衆車的な印象が強いのだろう。

欧州で販売されているインフィニティ「Q30」。メルセデス・ベンツ「Aクラス」をベースに開発されている

 以上のような背景から、日産の上級4ドアセダンであるフーガやシーマは、今回の車種削減の対象車となる可能性があるのではないか。

 しかし、スカイラインがスポーツとして存続できるようであれば、その基本構成は将来的にも活用できる可能性があり、もし一旦姿を消すことがあっても、復活の機会はあると期待したい。

 理由は、この先の車歴を4年以下と短くする方針が、新たな中期計画の中で示されたからだ。

■生き残りの道はスポーティEVセダンか

 日米は、永年にわたり4年ごとのモデルチェンジや、その間のマイナーチェンジで魅力を刷新する事業を習慣としてきた。一方、欧州の自動車メーカーは、8年前後と2倍の車種寿命を基本とし、永く使い続ける商品開発を得意としてきた。

 そして近年は、日本の自動車メーカーも5~6年といった車種寿命を模索する開発が行われ、日産の方針はそれと逆行するようにも思われる。だが、電動化や自動運転化で変化の激しい時期であり、時代の動きに即した開発の体制が敷かれれば、さまざまな選択肢を追加あるいは削減し、企業活動を活気づけてゆけるかもしれない。

 電動化のなかでも、プラグインハイブリッド車(PHEV)を主力と考えたプラットフォーム戦略は、電気自動車(EV)への移行段階で再度見直しが求められる状況となっているからだ。

 この先、電動化の要請はさらに強まる傾向であり、米国のテスラが「モデルS」や「モデル3」で着実に4ドアセダン(モデルSはリアハッチバックだが)の領域を拡大していけば、日産が世界に先駆け10年の蓄積を持つEVの知見と、モーター駆動と相性のいい自動運転を結び付け、スカイラインはもとよりフーガのような4ドアセダンで上級EVへ進出する戦略が模索できるかもしれない。

2020年7月に発表予定の「アリア」もそうだが、日産は今後電動化を積極的に推し進めていく。フーガの生き残る道もそこにあるかもしれない

 スカイラインはスポーツ群に区分けされているが、EVになれば、静粛性や乗り心地に優れるのみならず、おのずとスポーティな走りとなる。この先さらなる電動化を視野に入れたモデルチェンジがスカイラインで行われるはずで、そのプラットフォームは、フーガやシーマへ拡大展開することも可能であろう。そこには、インフィニティにふさわしいプレミアム性と、技術の日産を誇る商品力を示せる将来性があるのではないか。

 1999年の日産リバイバルプランから、EVの「リーフ」と、「GT-R(R35)」が新たに生まれた。そこから20年を経た今日、業績悪化から日産が立ち直るためには、リーフやGT-Rと同じように独自のフラッグシップが牽引役になるだろう。

 売れ筋の車種だけでなく、時代を拓く先進的で上級なスポーティEVセダンという次の主役の登場を、トヨタ車やドイツ車だけでは飽き足らない消費者も、待ち望んでいるのではないだろうか。

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