損害保険料率算出機構が2020年5月に発表した『自動車保険の概況』。そのなかの「任意自動車保険 用途・車種別普及率表(2019年3月末)」のデータを見ると、全労災のマイカー共済など自動車共済に加入している乗用車を合わせても、10台に1台が自動車保険に未加入という状況がわかった。
しかし、もしそんな無保険車との事故を起こしてしまったらどうなるのか? 自動車を運転している読者ならば、ぜひ知っておきたいと思うことだろう。
今回はこのほか、無保険車を運転するということは、どれほどドライバーとして問題があるのか? また、それならば任意保険は強制加入にならないのか? といった問題について、損保の資格を持つモータジャーナリスト、高根英幸氏が解説していく。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock(Milan@Adobe Stock)
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■共済を含めても10台に1台は任意保険未加入という実態
高齢ドライバーによるペダル踏み間違いでの急発進、フラフラと車道を逆走してくる(しかも夜間は無灯火!)自転車、幼児の乗るペダルなし自転車(公道走行不可!)……。10年前と比べ、交通事故の危険因子は間違いなく増えている。クルマの安全性が高まっているから、交通事故の犠牲者は減っているが、交通事故そのものは依然として相当数あり、年間50万件近くもの事故が起こっている。
近年はあおり運転や自動車盗難など、交通事故以外の犯罪に巻き込まれる可能性もあり、自衛のためにドライブレコーダーがバカ売れしているような時代なのに、自動車保険に加入していないクルマも存在するのである。
損害保険料率算出機構が2020年5月に発表した『自動車保険の概況』によれば、自動車保険の加入率は全国平均で74.8%。さらに全労災のマイカー共済など自動車共済に加入している乗用車を合わせても、およそ9割。単純に考えて10台に1台が自動車保険に未加入なのである。
クルマの保険には、登録時から加入が義務付けられる自動車賠償責任保険、通称 自賠責保険(別名:強制保険)と、登録後に任意で加入する自動車保険(別名:任意保険)がある。
任意とは言ってもクルマを所有して、公道を走行させる以上、加入していないと万が一交通事故を起こした際に、相手の治療費やクルマや建物の損害を賠償することができなくなってしまうことも珍しくない。これは被害者も加害者も不幸なことになる。
つまり自動車保険は、公道でクルマを運転する以上、絶対に入っておかなければいけない保険なのである。
■もし相手のクルマが自動車保険未加入で事故に遭ったら…
もし自動車保険に未加入のクルマが交通事故を起こしたら、どうなるか。自賠責保険には加入していたとすると、同乗者や第2当事者(事故の責任が小さいほう)のケガに対する治療費は自賠責から支払われるが、それとて限度がある。
自賠責の傷害賠償の限度額は120万円。これは治療費だけでなく、通院のための交通費や休業補償、精神的苦痛などの慰謝料まですべて含んでの金額だ。後遺症があったり、死亡してしまった場合は3000万円が限度額となるが、これも年齢や職業によってはまったく足りない。
自動車保険に未加入のクルマのなかには、車検切れのまま走行しているケースも有り得る。そうなると自賠責保険も切れている無保険車状態。車検時の点検整備もしっかりと受けておらず、ブレーキの性能だってしっかりと確保されているか、怪しい状態だろう。
そんなクルマは公道を走ってはいけないのだが、クルマの品質が向上した結果、物理的には走れてしまうこともあるのだ。想像するだけで恐ろしいことだ。
自動車保険未加入のドライバーのなかには、前年に交通事故を起こして、等級が下がって保険料が急上昇してしまったために、払うことができず保険期間の継続を中止してしまったケースや、「自分が運転に気を付けてさえいれば大丈夫」などと勝手な判断で、自動車保険の保険料を払うのを惜しんでいるドライバーも含まれているようだ。しかし、どちらも自分勝手な考えで、公道を危険に晒していることになる。
そんな自動車保険未加入ドライバーと交通事故に遭ってしまったら、どうしたらいいかと不安になってしまった方もいるのではないだろうか。しかし安心して欲しい。自動車保険を扱う損害保険会社は、そうしたリスクにも対応する「無保険車傷害特約」という特約を自動車保険に用意している。
これは交通事故に遭った際に、相手のクルマが自動車保険に加入していない場合、自車の乗員のケガの治療費などをカバーしてくれるもの。
以前は、自分のクルマに同乗している人がケガをした場合などの治療費をカバーできる「搭乗者傷害保険」というものがセットになっていたが、最近は交通事故の相手のクルマの保険の有無に関わらず、ケガなどの治療費を広くカバーできる「人身傷害保険」というものがセットされるようになった。これは相手との示談に関係なく、治療費や慰謝料を払ってくれるものだ。
借りたクルマが自動車保険に加入していない、あるいは家族限定などで適用外となる場合も、自分のクルマに掛けている自動車保険でカバーできる特約もある。これは「他車運転特約」というもので、対人と対物、それに人身傷害賠償保険を、契約した車両ではないクルマにも適用できる。
「弁護士費用特約」も入っておくべき特約だ。これは交通事故での示談交渉などで弁護士に依頼する費用を担保してくれる特約で、保険によるが無料もしくは低額で組み込める特約なので、絶対に入っておいたほうがいい。
無保険車傷害特約では自分のクルマの損害まではカバーできないため、車両保険に入っていても相手の過失が大きければ、自車の保険金はそれほど出ない。そうなったら弁護士に依頼して相手に修理代や車両の評価損を払ってもらう交渉をしてもらうようなケースも出てくる。さらにこの特約は交通事故以外にも、何かモメ事で弁護士に依頼するような時にも使える場合もあるのだ。
自動車保険に加入していない人はもちろん問題だが、そういうドライバーがいることから保険加入者も自衛のために補償を充実させておく必要がある、ということだ。
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