日常の足から趣味の相棒まで、幅広い世代に愛用される自転車だが、その保険については、あまり意識したことがない人も多いのではないだろうか。今、各地の自治体では、自転車保険加入の義務化を条例として制定する地域が増えている。
なぜ自転車保険の加入が、義務化されるのか。その狙いから対象となる自転車保険の種類まで、そのポイントを解説する。
文/大音安弘
写真/Adobe Stock(akiyoko@Adobe Stock)
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■なぜ自転車保険が加入義務化に!?
2020年4月1日より東京都、奈良県、愛媛県の3件で、新たに自動車保険の加入が義務化された。表1には、4月1日現在での全国の条例制定状況をまとめたものだが、努力義務まで含めると、すでに26カ所の都道府県で施行されていることが分かる。
こうした流れは、政府が自治体に対して、条例などによる自動車損害賠償責任保険などへの加入付けを要望したことに起因する。なぜ政府は、自転車保険への加入を促進に動いたのか。その理由には、近年の自転車事故の傾向が挙げられる。
警察庁のデータによると、交通事故発生件数は近年減少傾向にあるいっぽう、自転車乗車中の交通事故件数の比率は、以前として、全体の約2割を占める現実がある。そこで、自転車事故の被害者の救済と加害者の経済的負担の軽減を図ることを目的としたものなのだ。
自転車交通事故というと、軽微なものを想像しがちだが、死傷事故となるケースも多い。事実、2015年(平成27年)の自転車乗員中の交通事故死傷者は、9万7805人にも上るのだ。そのなかでは、自転車が加害者となるケースもある。そうなれば、軽車両として扱われる自転車も刑事責任とともに、民事上の賠償責任を負うことになる。もし被害者が死亡もしくは大怪我となれば、その賠償金額は、極めて高額となる。
日本損害保険協会の調べによると、小学生の運転する自転車が老人と正面衝突。その怪我により被害者の意識が戻らなくなった事故では、裁判の結果、約1億円の賠償命令が言い渡されたという。もちろん、被害者への賠償は人身に限らず、物損についても行う必要があることはいうまでない。万が一のことを考えれば、保険加入はマストなのだ。
■必ずしも自転車保険が必要とは限らない!?
政府主導の取り組みなので、自転車保険の加入対象と保険の内容は、基本的には共通だ。加入が求められるのは、自転車の利用者、自転車を利用する事業者、自転車貸付業者の3社が含まれる。因みに、利用者が未成年の場合は、保護者などが加入することになる。
今回、個人向けの対象となる自転車保険を表2にまとめた。すると、該当する保険の種類が、あまりも多いことに気が付く。その理由は、あくまで被害者救済を目的としているからだ。
つまり個人賠償責任が含まれている保険ならば、被害者への賠償を行うことができるからだ。このため、条例の基準だと、加入済みとなる人も多いはずだ。
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