ドライバーファーストとマルチパスウェイ哲学でトヨタを牽引
今回の殿堂入りで、より特徴的なのは、その後のトヨタの「改革」への評価だ。豊田会長は「走る楽しさ(Fun to Drive)」をトヨタの中心に据えるべく、TOYOTA GAZOO Racingを立ち上げ自身がステアリングを握り続けた。
「モリゾウ」の名前で耐久レースに参戦し、ニュルブルクリンク24時間レースなどにも出場した。単にモータースポーツを企業イメージ向上のために使うのではなく、自らドライバーとしてクルマを評価し、商品そのものや、ものづくりの思想へとつなげてきた。
AHFが「driver-first philosophy」、つまりドライバーファーストを強調したのは、まさにこの部分だ。さらに豊田章男会長は開発にとどまらず、イベントなどでも積極的にドライビングを披露し、クルマの楽しさをアピールしてきた。
もうひとつ大きいのが電動化への考え方である。豊田会長はトヨタが強みを持つハイブリッドを継続しつつ、バッテリーEV、水素技術などにも投資する「マルチパスウェイ」戦略を提唱してきた。電動化をひとつの技術に集約するのではなく、地域、エネルギー事情、ユーザー環境に合わせて複数の選択肢を用意するという発想だ。
結果としてトヨタは大きな飛躍を遂げた。AHFはこのマルチパスウェイ戦略を豊田章男会長の大きな功績のひとつとして挙げている。
ちなみにトヨタ関係では、1994年に豊田英二氏、2007年に豊田章一郎氏、2018年に創業者の豊田喜一郎氏、2022年に大野耐一氏が殿堂入りしている。
豊田章男氏が評価されたのは、トヨタを単に巨大企業にしたからではない。危機のなかで信頼を取り戻し、モータースポーツを軸にしたクルマづくりを進め、自らハンドルを握り、商品づくりに関わり、さらに次世代パワートレーンでも複数の道を提示した。殿堂入りは、そのすべてが評価された結果だ。
「経営者でありながら、ドライバーでもあること」。
そのスタイルによって、トヨタという会社の価値観そのものを変えたこと。それこそが、豊田章男会長が世界の自動車史に名を刻む理由なのだ。
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