なんとボルト1本で「1g」軽量化!!
もちろん、単純に鉄板を薄くするだけでは安全性を確保できない。そこで重要になるのが高張力鋼板だ。スズキが今回示した例では、通常の鉄板の強度が270MPaであるのに対し、高張力鋼板では1470MPa。
強度が必要な部分にこうした材料を使うことで、板厚を薄くしながら必要な強度を確保する。一方、剛性については単純に材料強度だけで解決するのではなく、形状や構造を工夫する。材料、形状、構造を適材適所で組み合わせることで、ただ材料を増やすことなく必要な性能を作り込んでいく考え方だ。
そして、いかにもスズキらしいのがここからだ。車体構造を大きく変える一方で、スズキはボルト1本の重量にまで目を向けている。
二輪車や船外機ですでに採用していた技術を四輪にも展開し、M8ボルトの頭部を小型化。これによってボルト1本あたり約1gを軽量化するという。
「たった1g?」と思うかもしれない。しかし、1台のクルマには2000本以上ものボルトが使われている。もちろんすべてを同じボルトへ変更できるわけではないが、1gの積み重ねを決して無視しない。
まさに「たかが1g、されど1g」なのである。
構造の変更や材料置換といった大きな軽量化だけではなく、ボルト1本、部品1個という単位まで見直していく。こうした積み重ねによって100kgという大幅な軽量化を実現しようとしているのだ。
軽量化は燃費のためだけじゃない
クルマを軽くすれば、走行時に必要なエネルギーを減らすことができる。しかしスズキは、軽量化の効果をそれだけとは考えていない。クルマそのものを軽くできれば、製造に必要な鉄、アルミ、樹脂、そして電動車であれば電池材料の使用量そのものを減らせる。
つまり100kgの軽量化とは、完成したクルマの燃費や電費を改善するだけでなく、クルマを作る段階から使用する資源を減らす取り組みでもある。「軽いクルマを作る」という昔からのスズキの得意技が、これからの資源問題にもつながってくるわけだ。
軽量化と安全性の向上はまさに相反するトピックであるのだが、それを両立してやろうというメッセージは今回プレゼンテーションを実施した鈴木俊宏社長や、加藤勝弘副社長から溢れていた。
初代アルトの開発途中で低価格化の壁にぶち当たった際に、「それならエンジンを取ったらどうだ」と言い放った故・鈴木修氏の魂が生きていると感じた発表だった。
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